そこから母は人が変わったようになって、もう作り笑顔をしくなって、子どもの頃の辛かった話とか、夫の家族との関係性で大変だったこととか、私たちには絶対言わなかったことを話し始めて。そこから母は変わったそうです。
ACや発達障害、パニック障害などの話はまだタブー視されている
――ご自身がアダルトチルドレンだったことや、カウンセリングを受けたことを公表したあと、周囲の反応はいかがでしたか。
東 ものすごく反響がありました。芸能界の方、テレビのスタッフさんなりタレントさんなりがこっそり「実は自分もこうなんです」という話をしてくれて。自分の状況を吐露するようなお手紙もたくさんいただきました。
――昔は特に、ACや発達障害、パニック障害だったりという話がタブー視されていましたよね。
東 そうですよね。今は認知が広がったから以前よりはオープンになったと思いますけど、それでも一般的にはまだタブーな感じもあったり。一生懸命社会に適応して頑張っているから、家族との色々な問題とか、ネガティブなことって言いにくい面もあるようです。まだまだ「こっそり」じゃないといけないんだって。
――東さんは一般社団法人「Get in touch」で理事長をされていますが、ご自身の過去やカウンセリング体験が、今の東さんの活動に影響を与えていると思われますか。
東 もちろんです。「Get in touch」では生きづらさを抱えている人やマイノリティの方を排除しない、誰もが排除されない社会の実現を目指しているのですが、よく「なぜ活動をしているのですか」と聞かれるんですね。それでいつも「私自身が生きづらいし、どんな状況でも、状態でも、私は私らしく生きていたいからです」と答えるんですけど。
知らず知らずのうちに「良い人」を目指していたり、学歴や実績、結婚しているかどうか、子どもがいるかとか、そういう価値観のもとで生きているからみんなしんどいんだと思うんです。
若い人たちがパートナーを「嫁」と表現することが気になる
――決められた型に嵌まらないといけない、みたいなことですよね。
東 ACであることが悪いわけじゃなく、それは環境が作ってきたものなんですよ。いまだに幼稚園に行ったら「元気で明るくたくましい良い子」「挨拶しましょう」と貼っていたりもするわけで。挨拶ができない子もいるし、家にお金がない子もいるし、裕福でも虐待を受けてる子もいますよね。だから「すべてのあなたたちの命は素晴らしいんですよ」という社会にしないと、と思います。
――現在の日本の家族観、例えば母親像、父親像についてはどう思われますか。
東 随分変わりましたよね。これまでの家族観というものが崩れつつあるし、選択式夫婦別姓を訴える人も、同性婚が成立していないことに「おかしい」と声をあげる人もいるから、フラットにはなりつつあると思います。