だけどその反面、また家父長制的なもの、伝統的な家族観を重視する人たちも増えていますよね。すごく些細なことなんですが、とっても気になっているのは、若い人たちがパートナーを「嫁」と表現すること。「妻」ではなく「嫁」と言うと、そこに主従関係が生まれるので、そうすると「女の子は家事ができる方がいい」みたいな価値観に戻ると言いますか、先人たちが頑張ってその価値観を変えてきたのに、という。
こんなことを言うと「些細なことに囚われすぎだ」と言われるかもしれないけれど、些細なことの積み重ねが重要で、特に言葉や表現というのは。
母との関係でとても反省したこと
――呼び方ひとつで変わることがありますよね。今日、いろいろと伺ってきましたが、今インタビューを読まれている方の中には、家族の問題で悩まれたり生きづらさを抱えられている人も多いと思います。そういう方にメッセージをいただけるとうれしいです。
東 家族だからこそ、分かり合えないと思うんですよね。他人だったら「まあいいか」と許しちゃうことでも、家族だからこそ悲しみも、怒りも、喜びも大きくなる。血縁関係や法的な絆はあるけれども、違う人間なのだと思っていた方がいいんじゃないかと。
おそらく家族の前ではそれぞれが、親とか子どもとかきょうだいを演じているんですよね。でも、それ以外の顔があることを知っていた方がいいし、そういう顔も大切だと思っていた方がいいと私は思います。知らない・分かり合えていない人間同士がわかり合おうとしていると考えた方がいいですよね。
――「家族とわかり合えていない」現状に対して、自分を責めてしまう人も多い印象があります。
東 辛いでしょうね、わかり合っていなくて当然なんですが。私が母との関係でとても反省したのは、お互いに「自分の気持ちをわかってほしい」という思いが強すぎたこと。だから「わかってほしい」よりも前に、相手をわかろうとする方がスムーズかもしれないですね。
今後もどんどん、やりたいことをやっていきたい
――最後に、今後の東さんの展望や、やりたいことを教えていただけると嬉しいです。
東 やりたいことがありすぎて、どうしようって感じです。私、仕事は好きなので、自分の言葉で表現する仕事を大切にしていきたいなと思います。あと、旅行はしたいです。
今の活動は早く辞めたいですね(笑)。やめてもいい社会になってほしい。本当は「Get in touch」の代表も交代したいけれど、なかなかまだ難しいですよね、やらなきゃいけないことがもっと広がっているので。
それに俳優として、悪女役やおばあちゃん役をやりたいですね。詐欺師のおばちゃん軍団とか、やりたいなと思います(笑)。
あと10年か20年くらいしかやりたいことってできないだろうし、自分がやりたいことをやったって、誰かが命を落とすわけじゃない。だからどんどん、やりたいことをやっていきたいですね。
撮影=三宅史郎/文藝春秋
INFORMATION
東ちづるさんが、現代風にアレンジしたメジャーな妖怪からオリジナルの妖怪まで61体を自ら描き、社会風刺を交えながら解説した書籍「妖怪魔混大百科(ようかいまぜまぜだいひゃっか)」(ゴマブックス)を7月24日に出版。
詳細はこちらから→http://www.goma-books.com/archives/64029
◆出版を記念して原画展も開催中!
『妖怪魔混大百科』原画展 with Get in touch
日程:2023年9月8日(金)~9月24日(日)
時間:11:00~19:00
場所:日比谷OKUROJI
入場:無料