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――AVを撮ることについては、当時どんなふうに感じていましたか?

望月 ずっとAVを撮ってると、心と体が分離するみたいなことになるんです。要はAVってなににこだわるかの話なんですよ。ただフェラチオがあって、本番があって、というだけだと熱がこもってないのがばれちゃう。でもそこに監督のこだわりがあると、視聴者はエロチックな感情を一緒になって高めてくれる。

 だからエロい本を読んだり、難しい本を読んだりして、こだわりのセックスのファンタジーを自分のなかに作るんです。そのファンタジーを女優や男優に演じてもらうのがAV監督の仕事ですよね。でも俺自身は実際にはなにも体験しない。現場で見て、ああこんなものかって、それを思い出して家でオナニーするくらいですよ。それでなんとなく消化しちゃってるんです。

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 だから村西さんみたいに肉体で消化できる人のほうが、きっと幸せなんだろうなと思います。肉体と心が分離しちゃうと、インポだったというわけじゃないけど、やっぱりそうとうセックスから遠ざかりますね。まあ必要ないかとか、楽したいからソープでいいかとか。

 最後に俺がこだわったのは、たしかバルセロナオリンピックを見たあとで、汗だくで頑張ってる女の子はかわいいな、と。それで女の子に重いものを持ちあげてもらうとかして、汗だくでセックスするビデオを作りました。最後はもう変な方向に行ってたなという気がします。

撮影 細田忠/文藝春秋

ピンク映画とAVの違いは何でしょうか?

――AV以前にはピンク映画に携わっていたわけですが、ピンク映画の世界とAV業界にはどんな違いがありましたか?

望月 いろいろあると思うけど、ひとつにはお金ですよね。俺が助監督をやってたころのピンク映画なんて、ギャラをもらっても準備中と撮影中になくなっちゃう程度だったから。制作費も少ないので、男優へのギャラを浮かせるために俺たち若手が代わりに男優の役をやりました。監督のギャラだってすごく安いし、女の子たちも1日3万とか4万とか。だれももうかってなかった気がします。

 あとフィルムで撮るのとビデオテープで撮るのでは、こんなに違うんだっていうのも感じましたね。ピンク映画はフィルムだから、本番をやるなんて考えられなかった。それは長回しができないから。ピンク映画の絡みはお芝居なので、女優さんはみんな前張りをしてましたよ。そのうちビニ本とか、そういうところから女の子が入ってくると、面倒くさいからしないっていう子が出てきて驚いたのを覚えてます。