「アイカちゃん、お疲れ様。はい、これ」
手術が終わって意識がはっきりしてくると、先生から鏡を手渡された。
「一度、自分の顔を確認してもらえるかな?」
受け取って、恐る恐る自分の顔を確認する。
「……えっ、なにこれ」
その当時の私はよくわかっていなかったんだけど、整形手術のあとにはダウンタイムが付き物だ。切って貼って無理やり顔の形を変えた傷跡が、徐々に馴染んでくるまでの時間のことをダウンタイムと呼ぶ。
手術直後の私の瞼は、自分のものとは思えないほどパンパンに腫れ上がっていた。
「腫れが引いたら、きれいな二重瞼になってるはずだから」
不安がる私を、先生は必死に宥めようとした。とにかく何もかも初めての経験でかなり戸惑ったけど、プロがそう言うんなら、まあ間違いはないんだろう。不安と安堵、両方の気持ちを抱えながら、私は病院を出た。
手術は無事終わったとして、困るのがその後の学校だ。ダウンタイム中なのでしばらく休みますなんて到底言えないから、仕方なく瞼を腫らせたまま登校するということになった。
「前の方がよかったんじゃない?」
噂好きでデリカシーのかけらもない中学生からしたら、私は格好の注目の的だった。
「どうしたのその目」
「めっちゃ腫れてるじゃん」
「前の方がよかったんじゃない?」
私がなんでこんなことになっているのか何も知らないくせに、学校中が大騒ぎだった。しまいには「アイカは学校の外で援助交際をしている」という、めちゃくちゃな噂までたったほどだ。
噂はすぐに先生たちにまで届いて、私は職員室に呼び出された。
「アイカさん、何があったのか詳しく教えてもらえる?」
大勢の教師に囲まれて、瞼が腫れているわけを問いただされた。別に正直に話してもよかったのかもしれないけど、話が大きくなるのも面倒だし、「ちょっと目の病気になって、その手術で……」とかなんとか、適当にウソをついた。