グランプリには、2人が選ばれた。そしてそのうちのひとりが、なんと私だった。もうひとりは、ユナちゃんっていう同い年くらいの女の子。「本当にこの子と私が?」と不安になるくらい、とても可愛らしい子だった。
きっとこの子が、これから私の戦友であり、ライバルになっていくんだろう。右も左もわからなかったけど、漠然とそう思った。
平日は学校に行って、土日に事務所のスクールに通うという生活が始まった。ママは仕事があったから、毎週おじいちゃんが送り迎えをしてくれた。家族や親戚はみんな喜んで応援してくれたし、私も「ようやく自分が認められるものを見つけたかも」と思ってすごくうれしかった。
コンプレックス
スクールに通い始めてすぐくらいのタイミングで、私は目を二重にするための整形手術をした。元々私は自分のブサイクな顔が本当に嫌いで、小学生の頃から日常的にアイプチをして登校していた。
自分の顔に対してそういう感情が芽生えだしたのは、まだ前のパパやお兄ちゃんたちと生活していた頃の話だ。
その頃の私は、勉強でもスポーツでも、何かとお兄ちゃんたちと比べられることが多かった。見た目に関しても、どちらのお兄ちゃんも割と整った顔をしていて、目もきれいなぱっちり二重だった。
「それに比べてアイちゃんは、本当に顔が薄いね」
ママは口癖のように私にそう言った。
――アイちゃんは女の子なのに、全然可愛くない。
――そのくせ愛想もないし、性格も暗い。
――お兄ちゃんたちの方が、よっぽど可愛い顔をしている。
大好きなママが私に放つ言葉たちは、私の胸に容赦なく突き刺さってきた。
「アイちゃんが生まれたときにね、ママ、真っ先に先生に確認したの。これ、本当に女の子ですか? って」
これはママが何度も私に話して聞かせた、定番の“笑い話”だった。
――私は、可愛くない。
途中からショックを受けるとかそういう次元は通り越して、いつしかこれは私のなかで揺らぐことのない、圧倒的な事実になった。
小学3年生の頃ぐらいから、私は自分の顔を変えることを覚え始めた。眉毛を剃ってみたり、ビューラーを使ってまつ毛を上げてみたり。その中で見つけたひとつが、アイプチだった。