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「全員うすうす気づいてましたよね…」燃えに燃えているジャニーズ性加害問題から見えてくる“深すぎる病理”

2023/09/22
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 本人の趣好に過ぎないのだから、推しは無害とするのは微妙なところです。もちろん、単にファン心理として誰かやチームやグループが好きだから自分のためにグッズを買ったりライブチケットを生活が破綻しない程度に求めるのは「お好きにどうぞ」の範疇だろうと思います。ギャンブルも酒もアイドルも、適量であれば本人の好みの問題にすぎません。しかし、人生をかけて追いかけ、何の見返りもないのにファンクラブでの活動で他のファンの統制まで買って出る行為には危険がともないます。そういうのめり込むファン心理に付け込んで搾り取る行為自体がマルチ商法や宗教での過剰な自己犠牲や寄付行為で生活が破綻する人たちを生む構造とあまり変わらないのです。

ジャニーズ事務所旧本社のビル ©文藝春秋

性の商品化を進めた果ての……

 推しの問題は、コンテンツビジネス全体の一種のダークパターンの問題でもあり、ソーシャルゲームで過剰に課金をして破産するのもパチンコに熱中して車中に置き去りにした我が子が熱中症になってしまうのも、特定の脳内物質を出すために一定の行動にハマらせるビジネスの悪しき側面そのものと言えます。ジャニーズ事務所に関して言えば、ホストクラブとさして変わらない性の商品化という点では、見返りのない推しにカネを使って満足させられるダークパターンを使って性の商品化を進めた果ての、ファン心理の操縦なのでしょう。

 グラビアアイドルやプールでの水着撮影会、あるいは駅前や店頭に置かれた萌え絵は性の消費だと騒いでいた界隈が異様に静かなのも驚きです。ジャニーズ事務所の商法こそ、性の商品化そのものじゃないですか。

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 一方的な性加害に対して法律を変えろというのは結構ですが、温泉地で萌え絵パネルを配っただけの温泉むすめや、献血での宇崎ちゃんは遊びたいのコラボを「公共の場所で性的表現はけしからん」と騒いでいた方々が、文字通り性的表現や性の商品化そのものであるジャニーズ事務所の企業タイアップを平然と黙認し今回特に騒いでいないのは理解に苦しみます。

 普段は連帯だ協調だレインボーだと言っていた人たちはどこに消えてしまったの。性として消費されるのが男性なら構わないということなのでしょうか。