それは学校の先生に限らず、私たち医師にも言えることです。医学部では知的障害の定義的なことについては学びますが、実際に境界知能や軽度知的障害の子どもを前にしても、実際に接したことがなければわかりません。そういった子どもたちは見た目ではほとんど区別がつきませんし、普段の生活の様子もほとんど健常児と変わらない子もいます。
子どもを理解することから始める
では、そういうお子さんたちを見過ごさないためには、どうしたらいいのでしょうか?
それには、まずは目の前の子どもの状況を正しく理解することから始めるしかありません。境界知能や軽度知的障害の子どもたちの困りごとは、勉強が苦手という学習面だけにとどまりません。普段の生活の中で、いろいろと困っているサインがあるはずです。例えば、
・友達との会話についていけない
・相手の気持ちが想像できずにトラブルになる
・感情をコントロールするのが苦手。キレやすい
・約束を忘れてしまう。忘れ物が多い
・先生の話を聞けない
・手先を上手に動かせない
・体をうまく動かせない
……
そんなサインを観察し、困っている状況やその背景をひとつずつ理解していくことです。
そのためには、常に子どもの目線に落として、何に困っているのかを見ることです。子ども目線に立って、困っていることを考えると、必要な支援が見えてきます。
しっかり相づちを打ちながら、子どもの話に耳を傾けることが大切
もうひとつ大事なのは、子どもの話をしっかり聞くことです。子ども相手に限らず、人は、聞いているようでいて相手の話を聞き流してしまうものです。特に子ども相手ですと、説明がつたなかったり要領を得なかったりして、「それって、こういうこと?」などとつい口をはさんでしまいがちです。
さらに「あなたにも問題があるんじゃないの?」などと否定する発言をしてしまったら、子どもは心を固く閉ざしてしまいます。子どもにしてみれば、親や先生からの意見が欲しいわけではなく、ただ話を聞いて、自分のことを受け入れてもらいたい一心なのです。ですから、子どもの目を見て、しっかり相づちを打ちながら、話に耳を傾けることが大切です。
その際に、子どもが「お母さん、どうしたらいい?」「先生、どう思いますか?」などと意見を求めてきたら、初めて助言を与えてあげればいいと思います。