わざわざ地元に戻って喫煙所を探し回りながら、私は途方に暮れていた。早く見つけて帰らないと。でも、たぶんもうこの喫煙所には落ちていないだろう。誰かが持っていったのかもしれない。コンビニで買って行こうか?
いや、高校生にタバコなんて売ってくれるわけがない。どうしよう。どうしよう。こうしてる間にも、ヒロくんはまたどんどん怒ってしまう。私が使えないばっかりに……。
私がDV男にハマった理由
たぶんDV男にハマった経験がない人からすると、この時の私の気持ちはとても理解できないだろう。私は本気で、ヒロくんのためを思って見つかるはずもないタバコを探していた。理不尽なことを言われている感覚は全くなくて、むしろ怒りや焦りの矛先は自分自身に向いていた。こうなったのも全部、気が利かない私のせい。またヒロくんを困らせてしまった。無意識にそう思ってしまうほど、私のなかでヒロくんの存在は絶対的なものになっていたのだ。
「アイカのことついつい怒っちゃうのは、それだけアイカのことが好きだからだよ。キツく言ってごめんね。俺だけはずっと味方だから」
散々私のことを蹴って殴って罵ったあと、ヒロくんはいつもそうやって優しい言葉をかけてくれた。その通りだと思った。たしかに、ここまで私のことを考えて叱ってくれる人なんて、他にいない。もっともっと私のことを見て欲しかったし、そのためにヒロくんのことを完璧に満足させてあげられるようになりたいと思った。
たぶんこれは、私が小さい頃ママに対して抱いていた感情にすごく似ている。ずっとひとりぼっちだった私は、誰かにとっての特別な存在になりたくて仕方がなかったんだ。