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 紀子は膨大な整理作業に恐れをなして、一度は仕事を辞退しようとするが、震災と戦争を生き抜きながら標本を守ってきた万太郎とその家族の軌跡に想いを馳せ、「次の方に渡すお手伝い、私もしなくちゃ」と思い直す。その日から、日付と採集地がわからないものや、万太郎自身が採集したのか否かが不明な標本を判別するために、万太郎の日記から行動記録を抽出して照らし合わせるという、気の遠くなるような作業が始まる。

「もう〜、本当にまったく、亡くなってからもお騒がせよね〜」という千鶴の言葉に思わず笑いながらも、胸がいっぱいになる。この物語を半年間見てきた我々は知っている。天才・槙野万太郎のもとに集まり、その猛烈な志に振り回されながらも彼を支えてきた人々の姿を。そのうえで千鶴の口から語られる、「ダメなお父ちゃん」だけど「ただ一生涯植物を愛しただけなの」という言葉に感じ入ってしまう。

「守って、残して、次の世代につなぐ」という連鎖の裏には、こうした沢山の人々の志と、行動と、地道な作業の積み重ねがある。そこにロマンを感じざるを得ない。

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「雑草という草はない」という哲学が貫かれている

 植物も人間も、大きな自然界の中の一部であり、長い歴史の一端だ。「雑草という草はない」という哲学が貫かれたこのドラマは、ひとつひとつの植物、ひとりひとりの人間の存在は小さいかもしれないけれど、ひとつとして同じものはなく、それぞれに、懸命に生きて、影響しあって、この世界を形作っているのだと教えてくれた。

 いよいよ最終回。完成した『らんまん』という名の図鑑は、どんなfloraを見せてくれるのだろうか。

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 現在配信中の「週刊文春 電子版」では、「出演者、スタッフが連続告白 『らんまん』11の新発見」と題して、神木隆之介や浜辺美波の知られざる秘密から、今だから明かせるドラマの舞台裏まで9月29日に最終回を迎える朝ドラ『らんまん』の大特集を掲載している。さらに「文春オンライン」でも、『らんまん』に関する記事を多数配信する予定だ。