『エレガントな毒の吐き方 脳科学と京都人に学ぶ「言いにくいことを賢く伝える」技術』(中野信子 著)日経BP

 代々江戸/東京に住み続けてきた脳科学者ならではの視点で、京都のコミュニケーションの奥深さを紐解いた本書がヒット中だ。

「お宅のお子さん、ピアノがお上手どすなぁ」。もし京都の人にこう言われたら、額面通りに受け取ってはならない。真意は「お宅のピアノの音がうるさい」だからだ――。とは、よく語られること。このような京都特有の言い回しに触れると、よそ者はつい「(京都の人は)本音がわからず怖い」などと思ってしまいがちだ。だが著者は、それを《洗練されたコミュニケーション》と捉える。騒音に迷惑していることは伝えたいが、相手との関係を壊したくはない。つまりは自分の心も相手との関係性も大切にしようとするからこそ《エレガントな毒》を吐くのだと。

「本書では、複数の京都在住の方への取材をもとに抽出した『言いにくいことを賢く伝える技術』も具体的に紹介しています。その部分は、特に教師など周囲への気遣いが不可欠な職業の読者に響いているようです」(担当編集者の宮本沙織さん)

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 読者層は女性が6~7割。《エレガント》と《毒》という、真逆の言葉を組み合わせたタイトルに惹かれて購入する人も多いのだそう。

「昨今流行りの『論破』に一石を投じている点、京都出身のお笑い芸人・ブラックマヨネーズの、言葉の運用センスの考察も読みどころのひとつです」(宮本さん)

2023年5月発売。初版1万7000部。現在5刷6万5000部(電子含む)