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 何度も食べ吐きを繰り返したり、色々とやり方を調べたりするうちに、自分なりの方法論やその界隈の知識もだいぶ付いてきた。私が「摂食障害」や「過食嘔吐」という言葉をきちんと認識しだしたのも、この時期だったと思う。

3つの吐き方

 まず、吐き方は大きく分けて3種類ある。1つめはシンプルに指を突っ込む「指吐き」、2つめはお腹の力を使って吐く「腹筋吐き」、そして3つめは蛇口に繋いだチューブを胃の中に突っ込んで水を流し込み、そのチューブを抜いた勢いで吐く「チューブ吐き」だ。

 特にチューブ吐きは、界隈でも本当にヤバいと言われていた。これは主に指や腹筋を上手くできない人が強制的に吐くための方法なんだけど、「一度手を出してしまうと、もう“こっち側”には戻って来られない」と聞いたことがある。

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 私は最初指吐きをしていたけど、途中から腹筋吐きの方が楽だと気付いてそっちに切り替えた。過食嘔吐の界隈では「指とチューブは努力、腹筋は才能」と言われていて、どうやら私にはその才能があったみたいだ。

 これくらいの水分を摂って、これくらいの時間おいて、これくらいジャンプして、これくらいの角度で、これくらいの力を入れたら、上手に吐ける。何度も繰り返す中で、自分なりのやり方を身体に覚え込ませていった。

 他にも私は、より正しく吐けるように胃の中に「底」を作るという方法も覚えた。

 過食嘔吐の世界では、最も気持ちが良いのは「完吐き」だと言われている。これは名前の通り、胃の中のものをひとつ残らず完全に吐ききることを指す言葉だ。自分がきちんと完吐きできたかどうかを確認するためには胃に底を作っておくのが一番効率が良いということで、私はこの手法を覚えた。

 底と言うくらいだから、これは最初に胃に入れる必要がある。底にする食べ物は分かりやすい色がついていて、さらに重さがあって沈みやすいものじゃないといけない。そうしないと、底が途中でどんどん浮いてきてしまうのだ。

 これをある程度食べて底ができたら、あとは好きなものを順番に胃に流し込んでいくだけだ。これ以上は本当に無理、と思うまで死ぬほど食べて、胃の中が極限までパンパンになったら、次はいよいよ吐き出すステップに移る。