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 吐き出すとは言っても、全部が1回で出るわけではない。何回かに小分けにして、少しずつ胃の中を空っぽにしていくのが普通だ。ちなみにこのとき一番上の層、つまり最後に食べたものから順番に吐いていけるのが、最も理想的だとされている。

 時間をかけて何度も吐き、最後に下に沈んでいた色付きの「底」が出れば、完吐きは大成功。要するに底とは、「これで胃の中にあるものは最後ですよ」という目印のような存在なのだ。

 そんなわけのわからないことをストイックに研究しながら過食嘔吐を繰り返す私を見て、リョウさんは完全に戸惑っていた。

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「なんでそんなに食べちゃうの? なんで全部吐いちゃうの?」と心配そうに質問を重ねてくるリョウさんには、もはやいつものような冷静さはなかった。そして厄介なのが、私の方も自分がどういう状態なのかを上手く言語化することができなかったことだ。

「分かんない。私、おかしくなっちゃった。危ないとは分かってるけど、どうしても止めらんない」

 今はだいぶ整理できているけど、その時は私もリョウさんと同じようにパニック状態だった。

「環境を変えたら、何か変わるかもしれない。もうすぐ千葉に移動できるから、そっちではもっとのびのびやろう」

 さすがにこれは無視できないと思ったのか、リョウさんは色々と手を尽くしてくれた。

やめられない過食嘔吐

 私たちが千葉に移ってから、リョウさんは気を紛らわせるためにゲームを買ってくれたり、軽い運動ができるように自転車を買ってくれたりした。分からないなりにも、それなりに私のことを考えてくれていたのだろう。

 その気持ちはありがたかったけど、残念ながら何も手に付かなかった。私は引っ越した先でも狂ったように過食嘔吐を繰り返し、さらに深い沼へとはまっていった。もはやYouTubeの企画も何も関係なくて、プライベートでも自分で食べ物を大量に買い込んでは食べ吐きをするという毎日が続いた。