――そうした弾力性のあるライブを幅広く企画することを心掛けた結果、K-PROは「行列の先頭」のようなメジャーな芸人が集まる看板ライブから、まったく無名の芸人で構成されるライブまで、多種多様なライブが開催されるようになった、と。
児島 芸人さんの立場を考えながら、お笑いに詳しい人も、まだ見たことがない人も、それぞれが楽しめるライブがあった方がいいなって。ただ笑いたい人もいれば、芸人さんを応援したい人もいます。「お笑いが好き」といっても一概にはくくれないので、お客さんが選べるようなライブを提案していきたい。
「私が見てきたお笑いはね」って、お客さんのほうが芸人さんよりもお笑い歴が長くなってしまう瞬間はいつの時代もあるんですよね。お客さん上位になってしまうと芸人さんもやりにくくなってしまう。芸人さんとお客さんに齟齬が生まれないようにサポートすることも、私たちスタッフの役目です。
同時に、お笑いに詳しいお客さんと同じぐらい、若い芸人さんにも今までの東京のお笑いの歴史じゃないですけど、そうした文化的側面も伝えていかないといけないと思うんです。
「思い出に残るライブを作り続けていきたい」
――K-PROは2021年4月、キャパシティ150人収容の劇場「西新宿ナルゲキ」をオープンします。新人の若手がこんなにきれいな劇場でネタを披露できる……。00年代の東京のお笑いシーンを知っている身からすると信じられないです(笑)。と同時に、こうした環境を東京に作り上げたK-PROに頭が下がります。
児島 私自身、いろいろな芸人さん、いろいろなお客さんを見てきました。ネタ中にずっと「かわいい」って言われている芸人さん、最後の「ありがとうございました」で頭を下げずに怒って帰っていく芸人さん、出待ちのお客さんに1時間くらい立ち話で説教されている若手芸人などなど(笑)。
ただ、やっぱり振り返ったら振り返ったで、みんな、「あの頃はあんなことがあったな」とか「つらかったけど楽しかったな」とか、ライブシーンで頑張っていた時代って色濃く残っていると思うんです。それぞれの芸人さんの思い出じゃないですけど、その思い出の中に舞台というものがきちんと残っているといいなって。私たちは、そういうライブをこれからも作り続けていきたいんですよね。