飛島村に通じるバスは、飛島公共交通バスという。いわばコミュニティバスのようなもので、鉄道とこのバスを乗り継いで飛島村の中心地に行くことができる。鉄道側の玄関口は、近鉄蟹江駅。名古屋駅から近鉄電車に乗って約10分ほどののどかな町の駅だ。
村を走るバスは、本数がめちゃくちゃ少ないイメージがある。往々にして住んでいる人が少なく、ひとり一台のクルマを持つ世界。なので、都市部のようにバスをバンバン走らせても乗る人がいない。
だから飛島村へのバスも少ないんじゃなかろうか。そう不安に思いながら近鉄蟹江駅にやってきた。おそるおそる時刻表を見ると……ありがたい、40分に1本ペースで走っているようだ。
バスに揺られること20分。村に入ると…
飛島公共交通バスに揺られること約20分。しばらくは蟹江町や弥富市の田園地帯の中を走って飛島村に入る。入ったからといって何かが変わるわけでもなく、車窓は田園地帯が延々と続く。
飛島村の中では、主に愛知県道103号線という道を走る。道沿いには商店も建ち並んでいて、ごくごく小さな市街地が形成されているようだ。いわば、飛島村を南北に貫くメインストリート。「飛島」という村名そのままのバス停もこの道沿いにある。
飛島バス停で降りて、村の中を歩く。メインストリート(といっても2車線で歩道もない道路だが)沿いには郵便局やスーパーマーケットなどもあり、クルマで乗り付けて用事を済ます村の人たちの姿もちらほら。歩いているのは筆者だけで、つまり徹底的なクルマ社会というわけだ。
まあこのあたりは、村だからというより愛知だから、といったほうがいいかもしれない。名古屋の中心市街地でも、クルマばかりがたくさん走っていて歩道を歩く人はまばら、などという光景をよく見る。飛島村も、本質的にはそれと同じなのだろう。
メインストリートこそクルマ通りが多いが、その裏手はこの通り完全なる田園地帯である。ところどころには用水路とおぼしき小川が流れ、それを挟むように通りがあって家々が建ち並ぶ。都市部で見かけるようなマンション・アパートや戸建て住宅とはまったく違う種類の、立派な門扉を構える大きな邸宅ばかりだ。
そして、そうした住宅の裏側に田んぼや畑が広がっている。飛島村役場も、田畑の真ん中にぽつんと建つ。飛島村の本質は、まさにこうした田園地帯、という点にあるのだ。