嘱託殺人に巻き込まれないために
――「精神科医がこころの病気を解説するCh」では自殺をテーマにした動画も多いですが、希死念慮に囚われてしまったとき、嘱託殺人のような事件に巻き込まれないためには、どうすればいいでしょうか。
益田 SNSをやるときにアンダーグラウンドの世界に入っていくのではなく、福祉と繋がる方向に行くことが大切だと思います。でも社会から抑圧された結果、福祉を毛嫌いしている場合は多いですね。福祉の職員たちが必ずしもすごく優秀な集団というわけでもないですし、問題が起きたとき福祉側に問題があるケースもあります。とはいえ関わってみると福祉の職員さんは、ずいぶん働いてくれていると感じますよ。
あとは国や行政も、ただお金を出すんじゃなくて、もっと目を向けて関わって、福祉についてブラッシュアップしていくことを一緒に考えて欲しいですね。
なぜ精神科医がYouTube動画で事件を取り上げるのか
――いろいろな事件についてお話をうかがってきましたが、最後に、先生が今一番気になっている社会的な問題は何でしょうか。
益田 僕としてはジャーナリズムの部分というのに悩んでいます。社会を動かすのであれば、メディアの果たす役割というのはすごく大事だと思います。近い将来、新聞がなくなるんじゃないかと言われている中で、ニュースや事件をこれからはどう扱っていくのか、そしてどうやってマネタイズしていくのか。そこで、精神科医や学者などの専門家が片手間でもニュースを語るということは、多分これから求められるし、必要な時代になっていくのだと思います。
でもゴシップを暴露し、ポピュリズムみたいに政治家にまでなってしまうYouTuberというのも問題がある。暴露の中にもルールはあって、なかでも倫理的な問題を扱うとか、それをどう教育していくのか、というのも重要な課題でしょう。これからはメディアが声明を発表したり、報道について教育する機関として発達してくれたらいいと思います。
今回のビッグモーターの件も、元社員の人がしっかり内部告発をして、それが世の中を動かした。こういうケースは増えていくだろうし、増えていくべきだと考えます。