――境界知能の人が苦手分野を訓練によって補うことも可能なんですか?
益田 そういうパターンもあります。例えば目が見えない分、他の感覚がものすごく発達していったり、1つの能力だけが極端に上がってある種の天才のようになるとか。そうやって発達障害があるがゆえに、音楽や絵画の才能に秀でて、華々しい活躍をする人もいます。芸能界とか芸術の世界にも大量にいて、一般人とは一線を画します。でもそれは全体のほんの数パーセントであって、全員じゃない。そこを理解する必要があります。
認知症かと思ったら…妄想を生む高齢者特有の病
――「遅発性パラフレニー」という高齢者特有の精神疾患があるそうですが、妄想の症状があって、認知症との区別が難しそうです。先生のクリニックでも扱ったことがありますか?
益田 あります。来院する患者さんは少なくありません。
――どういう経緯で来院するんでしょうか?
益田 家族が困って、だますようになだめて連れてくるんです。例えば、お母さんが「隣の家の人は盗人なんだよ! 仲良くするんじゃないよ!」と怒鳴ったりし始めた。これは認知症の始まりか、と思って病院に連れて行くんだけど、検査の結果「認知には問題ないです」と突っぱねられて「家族の問題では?」とか「警察に相談してください」と言われてしまう。でもそんなこと言われても警察に「母を逮捕してください」なんて言えませんよね。
そうやって家族は途方に暮れているんだけど、僕らならそれが精神疾患だと診断できるから、来院してもらえれば治療につながります。病状に合わせて落ち着くように薬を出し、家族と連携します。
――いろんな寄り道をして、最終的にようやく来院するという感じですか。
益田 そう、一般の方はなかなか精神科クリニックに行く、という情報にたどり着けなかったんですが……でも最近は来院したご家族に「YouTubeで見て知りました」と言われるケースがすごく増えてます。こういうとき、文字と動画では影響力が全然違うことを実感します。精神医学の知識をYouTube動画にすることで、いろんな人が情報にアクセスしやすくなるんだと思います。