未解決のまま公訴時効を迎える
「こんなことってあるのだろうか」
警視庁公安部の幹部が開いた会見のニュースを見て、思わずつぶやきがもれた。
事件発生から、ちょうど15年後のこの日。犯人を逮捕できないまま、事件捜査は公訴時効を迎えた。記者会見はその発表の場だった。日本の治安機構のトップを襲った事件は未解決。つまり、日本の警察は一敗地にまみれたのである。
この国では重要犯罪の検挙率はおそろしく高い。現在も90%を超えている。大きな罪を犯せば、ほぼ逮捕されるといっていい。それなのに警察組織のトップを狙った犯人を警察は逮捕できず、公訴時効を迎えることになった。どうしてこんなことになってしまったのか。警察の発表が信じられなかった。
腑に落ちない3つの疑問
驚きはそれだけにはとどまらなかった。会見の場で公安幹部は「犯人はオウム関係者」とはっきりと述べたのである。立件できなかった警察が、公訴時効を発表する場で犯人を名指しする。警察が公の場で負け惜しみをいうなど前代未聞だ。当然、マスコミは警察の姿勢を批判した。のちに警視庁は、オウム真理教の後継団体から名誉棄損で訴えられ、裁判でも敗訴している。
何かがおかしい。腑に落ちないことばかりだ。
得体のしれない違和感は、3つの疑問に起因していた。
結局、犯人は誰だったのか
どうして逮捕できなかったのか
犯人の動機は何だったのか
公訴時効のはずが何も終わっていない。むしろ、捜査終結がミステリーの始まりだった。
時効を迎えてからは、捜査中は明らかにされなかった犯人追跡の記録が次々と刊行され、テレビやネットのニュースでも報じられるようになった。(今年の春にも、事件の逃走に協力したという元自衛官の証言が全国紙の記事になっている)