働いている女性が多くなった今、経済力を持つ女性も増えた。それによって、独身も結婚も離婚も、女性の心づもり次第で選択できるようになった。そんな今だからこそ、大人の女性のメンタルを知ることが、生きていくためのヒントにもなるのではないだろうか?
ここでは、恋愛小説の名手として知られる直木賞作家・唯川恵さんが、12人の女性のリアルな証言をもとに綴った『男と女 恋愛の落とし前』(新潮新書)より一部を抜粋。夫の浮気癖に悩む元ヤン妻・直子さん44歳のエピソードを紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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「高校の時はかなりのヤンキーでした」
「1か月前に、左足のくるぶしを剥離骨折しちゃって」
彼女は肩をすくめながら言った。
それは大変だったね。
「剥離骨折って、ご存知ですか? 骨が剥がれちゃったらしいんです。酔っぱらって、電信柱を蹴ったのが原因です。さほど痛みはないし、サポーターで固定してるだけなんですけど、骨折なんて初めてだし、やっぱり年をとったのかなぁってショックでした。それに仕事に支障が……。あ、私は今、スポーツジムのインストラクターをやってるんですけど、レッスンできないじゃないですか。だからいまは受付業務ばかりで身体を動かせないので、超、ストレスたまってるんです。身体、なまっちゃうし」
44歳の直子さんは、待ち合わせの居酒屋にやってくるなり生ビールを飲みながらそう言った。お子さんが4人いて、上から25歳男、22歳男、15歳女、10歳女。第1子出産は19歳である。
「私は北関東の地方都市に住んでるんですけど、地元は遊ぶところはないし、東京に行くにはちょっと遠いという中途半端な場所なんです。だからというわけじゃないですけど、高校の時にちょっとやんちゃしたっていうか……レディースやってて、何度か停学処分にもなりました」
つまり、あなたは──。
「はい、元ヤンです。あの頃は、髪は金髪、化粧もばっちり、まあかなりのヤンキーでしたね。何度か家出もしたりして、親を泣かせました」
19歳で出来ちゃった婚
言われてみれば、ヘアスタイルやメイク、ファッション、言い回しにそれらしき名残がある。
「何とか高校は卒業できたんですけど、就職先で性格悪いお局とぶつかって、大喧嘩になって、3か月で辞めてしまいました。しばらくブラブラしてたんですけど、お金もないから、スポーツジムでバイトをすることにしたんです。元々運動神経はいい方なんですよ。やってみたらやっぱり性に合ってたみたいで、すごく楽しくて、バイトしながらフィットネスインストラクターを目指そうと決めました」