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嵐・櫻井翔らニュースキャスターへの起用で「必要以上に慎重に」…ジャニー喜多川氏の性加害問題とテレビ局の“検証”

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2023/10/30
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「マスメディアとしては極めて不自然な対応をしてきた」

8月29日、ジャニー喜多川氏の性加害問題に関する記者会見を終えた「外部専門家による再発防止特別チーム」の林真琴座長 ©時事通信社

 前述の再発防止特別チームの調査報告書ではジャニー喜多川氏の性加害問題について、過去にいくつかの週刊誌が取り上げてきたものの、今年3月にBBCが特集番組を報道し、元ジャニーズJr.が性加害の被害について声をあげるまで、多くのマスメディアが正面から取り上げてこなかったと指摘している。

 1999年から「週刊文春」が報じた性加害についての記述が真実であると認定された2003年の高裁判決や、2004年の最高裁での高裁判決の確定のタイミングについて言及し、

「最終的に敗訴して性加害の事実が認定されているにもかかわらず、このような訴訟結果すらまともに報道されていないようであり、報道機関としてのマスメディアとしては極めて不自然な対応をしてきたと考えられる」

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「痛恨の極み」「反省せざるを得ない」

 再発防止特別チームの報告書の振り返りに続いて、「イット!」では、当時の新聞記事のコピーを拡大して示してみせた。「性加害」「性暴力」などの言葉ではなく「セクハラ」という表現を使っていたと伝え、毎日新聞(2004年2月25日)は2段で21行のいわゆるベタ記事で、朝日新聞(同日)も27行。いずれも、事実関係を短く伝える小さな扱いだったとコメントした。

 生放送のスタジオでは報道局の編集長・平松秀敏氏が登場してコメント。「痛恨の極み」という言葉で、当時は社会部司法担当サブキャップだったというかつての自分の不明を恥じた。

フジテレビ「イット!」10月2日より

「当時は芸能事務所と出版社の裁判沙汰であると。スキャンダルの一つであるという認識しか持てなかった。一報道マンとして本当に反省すべきだと思いますし、痛恨の極みだなと反省せざるを得ないと思います。ジャニーズ事務所に対する配慮、忖度というよりも、当時、この裁判自体にニュース価値そのものを見出せなかった。だからスルーしてしまったという非常に残念な、マスメディア全般がそうだと思うんですけれども、そういうような雰囲気があったんだなという気がしますね」

後日、「全編CMなし」で検証番組を放送

 平松氏がこのように反省の弁を述べたが、当初フジテレビは会社として組織的に検証する姿勢を見せていなかった。ところがNHK、日本テレビ、TBSに遅れをとりながらも、10月21日に「週刊フジテレビ批評 特別版」として「旧ジャニーズ事務所の性加害問題と“メディアの沈黙”」という25分間の検証番組を放送した。

 筆者が驚いたのは「全編CMなし」という形式だ。悪質な「やらせ」や「人権侵害」など、放送倫理上の深刻な問題を引き起こした場合などに、検証番組でこうした形をとることがある。それほどこの問題を会社として重大に考えているという証左のように見えた。