「ジャニーズが司会の番組でイケメンを出しにくい」と証言
1990年代後半、当時の編成幹部は「(旧ジャニーズ事務所所属タレントの)対抗馬となる子たち、他のスターをつくらなかった。怒らせたら面倒くさい」という認識を持っており、1995年以降は旧ジャニーズ事務所のタレントが出演する「24時間テレビ」で「チャリティーパーソナリティーを別の事務所の女性グループにした際にはジャニーズ事務所からは出演がなかった」と証言、その顔色をたえずうかがっていた様子を伝えた。
2000年代に旧ジャニーズ事務所のタレントが日本テレビの多くの番組に出演するようになると、「競合するタレントはキャスティングしないというのが不文律。ジャニーズが司会の番組でイケメンを出しにくい」などの忖度が働いたという証言もあった。
ジャニー喜多川氏の性加害問題については、当時の制作幹部が「ジャニー氏が男の人が好きだというのは業界の公然の情報として知っていたが、性加害をしているような認識はなかった。もっと知ろうともしなかった」、当時の編成幹部は「ジャニー氏のペントハウスに行くと簡単なレッスンルームがあり、そこにジュニアの子がいつも何人かいて、パジャマで出てきたこともあった。子供たちは小中学生だった」と証言していた。
報道だけでなく、編成や制作の幹部にもヒアリングしたことは、日本テレビが組織全体で取り組んだと評価できる。
報道番組へ櫻井翔と小山慶一郞を起用した影響
この検証番組で特筆すべきだったのは、旧ジャニーズ事務所の所属タレントが引き起こした事件で、日本テレビの報道が遅れたことを明らかにしたことだ。後述するフジテレビも同様の「遅れ」があったことを検証していたが、日本テレビはフジテレビより2週間以上前にこの事実を自ら視聴者に伝えている。
日本テレビでは、旧ジャニーズ事務所のタレントが報道番組に出演してきた。2006年に櫻井翔が「news zero」、2010年に小山慶一郞が「news every.」のニュースキャスターに起用されている。これを受けて、「報道するにあたって必要以上に慎重になったケースがあった」ことが明らかにされた。
その「報道の遅れ」とは、2018年、日本テレビの番組に出演していた旧ジャニーズ事務所の所属タレントが強制わいせつ事件で書類送検される事件が起こったときのことで、報道の現場では報じる準備をしていたが、編成と報道が協議して、当時の報道幹部が報じることに必要以上に慎重になったことで他社よりも放送が遅れたことも明かしている。
報道局長の伊佐治健氏、編成部門のトップであるコンテンツ戦略局長の森實陽三氏が登場し、今後は人権を重視して取材や番組制作にあたっていくことを述べた。各部局の責任者が顔を出して、自らの言葉でこうした宣言をするのは異例のことだ。会社として、日本テレビが本気で取り組んでいくという決意が見てとれた。
一方で、社名変更の発表直後は、組織的な聞き取り調査にまで至らなかったが、「ジャニー喜多川氏の性加害」について最高裁が認定した際になぜ報道しなかったのか、報道局の編集長が出演して反省の弁を述べたのが、フジテレビだった。
10月2日、2回目の会見直後のフジテレビ報道
ジャニーズ事務所から社名を変更すると公表された10月2日。旧ジャニーズ事務所による2度目の記者会見の直後の夕方ニュース「イット!」内でのことだった。
この日はテレビ東京を除く民放キー局とNHKが一斉に午後2時からの記者会見を伝えた。夕方のニュース番組、夜のニュース番組と各局のトップニュースはいずれも「ジャニーズ事務所の解体と廃業」についてで、フジテレビ「イット!」は旧ジャニーズ事務所の会見内容に加えて、報道機関として伝えるべきことを伝えてこなかった不備を認めた。