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薗部 ギャンブルとして成立している以上、競馬は絶対に「正解」がないんですよね。誰に聞いても必勝法はない。それに、馬は何を考えているかわからない。ただいくら考えても「正解」はないんだけど、それでも馬券を買うときはなんらかの根拠を元にするじゃないですか。その“わからなさ”具合が、ほかのギャンブルに比べて絶妙ですよね。

――たしかにダビスタでも、理由がわからない負け方をしたり勝ち方をしたりしますよね。ゲームはやはりレースシーンから作り始めたんですか?

初代の「ダービースタリオン」 イラストの雰囲気はすでに固まっている

薗部 いえ、それが実況なんです。

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――実況ですか?

薗部 競馬って、競馬場に行って見ることもあれば、テレビで見ることもあるけど、僕の場合はテレビのほうがドキドキするんですよ(笑)。生でレースを見ていると、自分の買った馬がどこを走っているのか正直わかりにくい。競馬の面白さや盛り上がりは、かなりの部分で実況のおかげだと感じていました。だから最初の『ダビスタ』は制作に3年かかったんだけど、実況部分だけで1年以上はかかりました。

――実況シーンってどうやって作るものなんでしょう。

薗部 ヒントになったのは、ファミコン版の『キャプテン翼』です。あのゲームは、プレイヤーが「ドリブル」「シュート」のようなコマンドを選ぶとその結果が実況と映像でシミュレートされますよね。これは新しいな、と。実況の言葉については『ドラゴンクエスト』ですね。ファミコンは平仮名しか表示できないけど、『ドラクエ』で堀井雄二さんが作った「平仮名でも読みやすい言葉」は参考になりました。

ダビスタの実況がたまに間違えるのは「意図的に残しました」

――『ダビスタ』の実況って文字数もかなりありますよね。

薗部 そこはね、わざと「ギリギリ読みきれないくらいのスピード」にしてるんです。そのほうが臨場感が出るから。競馬の実況ってスラスラと早口で流暢にしゃべるじゃないですか。あの感じを出したかったんですよね。しかも『ダビスタ』の実況は、たまに間違うことがある。

――たしかに、実況では勝ってるのに結果は負けてる、ということがありました。

薗部さんが初めて行った実際のセリ市での写真。当時35歳

薗部 先頭の馬がゴールする瞬間にゲーム内のアナウンサーがしゃべり終わるようにするために、実は数秒前に「予測」でしゃべり始めています。だから、最後に急に失速したり加速すると、実況と着順がずれてしまう。でも「間違えることもある」ほうがリアリティがあるので、それは意図的に残しました。

――『ダビスタ』で印象的なのは、競走馬の能力を知る方法が調教師の「スピード感あふれる走りを見せています」などのふわっとしたコメントだけで、データが見えないことでした。『ベストプレー』では選手の詳細なデータを作り込んだのに、どうしてデータを隠して、レースで走らせてみるまで強さがわからないような仕様にしたのでしょう。

薗部 やっぱり馬の能力って、絶対わからないですからね。それがわかっていたら、全然つまらないゲームになっちゃうと思ってました。