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――その後、1995年にスーパーファミコンで出した『ダビスタ3』が、100万本以上を売り上げる大ヒット作品となりました。先程の計算だと1億円を超えそうで、実際に1996年5月に発表された長者番付では「その他・芸能人部門」で5位に入っています。

薗部 あれは意図的に載ったんですよ。

――え、意図的?

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薗部 そう(笑)。当時の長者番付って、別に税務署などの公的な機関が発表していたものではないんですよ。公示された情報をもとに新聞社や業者が調べて、業種ごとに勝手にランキングを作成していたんです。だから、ランキングを作る人が認識していない業種は出てこない。僕より稼いでいるゲームクリエイターは何人もいたけれど、「ゲームをつくる仕事」が認知されていなかったんですよね。

1995年に発売されミリオンセラーの大ヒットになった「ダービースタリオン3」

――そんな中で薗部さんはどうやって載ったんですか?

薗部 どうせ税金をたくさん取られるなら目立ったほうがゲームのPRになると思って、申告書の職業欄に「ゲーム作家」って書いたんです。その肩書なら「作家部門」にランキングされるかもしれないと思って。結果的に「その他・芸能人部門」で5位に入りました。その後、ゲーム業界の人がマークされて、長者番付に名前が載るようになったのは僕のせいです(笑)。

「アグリキャップ」や「コウカイテイオー」の名前の秘密

――『ダビスタ』には「アグリキャップ」や「コウカイテイオー」、騎手でも「たき」や「おたべ」などギリギリ(?)の名前が複数登場していますよね。メジャーになると権利関係も大変ではありませんでしたか?

薗部 権利問題は実は野球の『ベストプレー』のときから直面していました。『ベストプレー』でも選手名は変名を使ってたんですけど、ダメといわれて使用料を払っています。それでもプロ野球はNPBが一括で管理してくれるので楽でしたが、競馬の場合は競走馬、種牡馬、繁殖牝馬、騎手の権利元がそれぞれ別。しかも騎手は個人事業主ですから、ひとりひとり許諾を得る必要がある。自筆で手紙を書いてお願いしたこともありました。

 

――『ウマ娘』でも同じような話が話題になりました。

薗部 馬主や騎手の方の中にはあまり乗り気でない方もいて、それは苦労しましたね。

――馬名をゲームの中で使ってもいいかが問われた「ダービースタリオン事件」は最高裁まで争われていました。

薗部 競走馬の馬名にはパブリシティ権はないのでゲームで使ってもいい、という話で収まりはしたんですけど、気を使うようにはなりました。じつは『ダービースタリオン』という名前も、JRAに存在したレース名から取っているんですよ。

――そうなんですか?