昨年秋に放送されて若年層を中心に大ヒットしたドラマ『silent』の村瀬健プロデューサー×生方美久脚本チームが手掛け、秋ドラマの最注目作と目されていた『いちばんすきな花』(フジテレビ系、木曜夜10時)。

  多部未華子・松下洸平・今田美桜・神尾楓珠による“クアトロ主演ドラマ”で、恋愛モノではないこと、男女の友情が成立するかを描くことが強調されていた。

メインキャストの多部未華子、松下洸平、今田美桜、神尾楓珠 ドラマ公式インスタグラムより

  放送が始まると、視聴率は最新話の第3話が4%台と苦戦する一方で、TVerお気に入り登録数は同時期スタートの民放ドラマ最速で100万を突破。第1話の「無料見逃し配信」は1週間で332万再生を記録するなど、絶好調。SNSでも毎週関連ワードがトレンド入りを果たしている。

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  テレビの視聴率以上に配信・SNSとで広がっているのは『silent』と同じだが、一方で不思議な現象も起きている。

 幅広い層から支持を集めた『silent』に比べて、『いちばんすきな花』(以下、すき花)は絶賛派と苦手派に大きく分かれているのだ。

「2人組になれなかった人たち」の物語

 秋ドラマナンバーワンと絶賛する声が多数ある一方、「苦手」という声も多く聞かれる。その大きな理由の1つに、『silent』よりも濃度が急激に高まった「自分語り」があると思う。

 主人公は、塾講師の潮ゆくえ(多部)、実家が花屋&出版社で働く春木椿(松下)、美容師の深雪夜々(今田)、ゆくえの幼馴染でイラストレーターの夢を追いかけながらコンビニバイトをする佐藤紅葉(神尾)という4人の男女。

多部未華子 ©共同通信

 年齢も育ってきた環境も全く違う4人だが、それぞれが人間関係にまつわる悩みを抱えている。

「唯一心を許せた異性の友達が、結婚を機に友達ではなくなってしまった」(多部)

「結婚を考えていた彼女を、彼女の男友達に奪われた」(松下)

「友達になりたいだけなのに、異性というだけで勝手に恋愛と捉えられてしまう」(今田)

「友達の友達もみんな友達と思っていたが、気付けば本音を話せる相手はいなかった」(神尾)

 4人の悩みは異なるようで、実は奇妙な共通点がある。それは「2人組になれなかった人たち」ということだ。