先日、岸田首相のメガネが10万円であることが話題となった。着用しているのはデンマークのメガネブランド「リンドバーグ」のものであるから、遠近両用レンズを入れていれば実際はもう少し値が張ったのではないかと思われる。
とはいえ、格安店でない限り、上質なフレーム+遠近両用レンズで10万円近くになることもあるだろう。現にSNS上では、「10万円は妥当な価格ではないか」という意見も多く見られた。
何に価値を感じてメガネを買うかは人それぞれ
はじめに自己紹介をしておくと、私はメガネ業界をメインに取材をしているライターだ。メガネブランドの多くは春と秋に新作を発表しており、展示会シーズンになると1日に100本以上のメガネを試着することもある。年間の試着数は、数千本に及んでいるかもしれない。
すでに所有のメガネは120本を超え充分過ぎる量を持ってはいるのだが、新作を目にするたびに欲しいフレームは増える一方。さらにレンズの新製品が発表されると、それを試したいがためにまた新たなフレームを買ってしまうのでキリがない。
それら私物のなかには掛け心地を重視して選んだものもあれば、掛け心地の悪さを我慢してでも掛けたくなるほどデザインに惹かれたものもある。何に価値を見出すかは人それぞれだろう。
高いメガネと安いメガネは何が違う?
現在、格安店ではレンズ代込みで1万円以下のメガネが販売されているが、日本のメガネ産地・鯖江で作られたフレーム単体の価格は3万~5万円辺りが主流だ。ではそもそも、そうした1万円以下のメガネとフレームのみで5万を超える製品では何が違うのか。簡単に説明するのは難しいが、ざっくりと言えば以下の5つの点が価格差の要因として挙げられる。
・素材
・製造方法
・作業工程数
・製造ロット
・ブランドの価値
たとえば、メタルフレームの場合、上質なものにはチタン素材が使われている。その分価格は高くなるが、軽くて耐久性に優れ、アレルギーが起こりにくいのが長所だ。
プラスチックフレームの場合、比較的安価なものにはTR-90などの樹脂素材が採用され、溶かした樹脂を型に注入するインジェクション製法にて作られる。これは大量生産に向く製法で、この製法による樹脂製フレームは軽くて弾力性に富むが、一方で掛ける人に合わせた細やかな調整がしにくい。