価格面では高くなっても、調整のしやすさや質感の高さにおいては、綿花由来樹脂のアセテートやセルロイドのほうが勝っていると言えるだろう。アセテートやセルロイドの場合は製法から異なり、大きな板状の素材からフレームの形へと一つずつ切出して成型される。さらに職人が表面を手磨きして艶を出すなど作業工程数も多くなるため、その分の手間や時間が価格に反映されていく。
ちなみに、鯖江のメガネは完成までに200以上もの工程数を経るという。これだけの手間暇がかかるものはおのずと製造ロットも限られるため、工程数を省いた大量生産品より高くなるというわけだ。
ブランドのオリジナリティも価格差の要因に
さらにオリジナリティを追求するブランドになると、ヒンジや鼻パッド、ネジなどのパーツについても汎用品を使用せず、独自で設計することも。その開発コストや金型製作といったハード面の投資も必要となり、当然そのコストも価格に上乗せされる。
こうしたこだわりは機能性の向上を目指したものもあれば、あくまで装飾的な面を重視している場合もあり、ある程度の金額を超えてくると、必ずしも価格差が掛け心地や機能性に比例するとも言い切れない。だがもちろん、そうしたデザインのオリジナリティや素材の希少性などに価値を感じて購入する人もいるだろう。
レンズこそ価格による性能差が現れる
一般的にメガネの価格というとフレームの話になりがちだが、じつは価格による性能差が顕著なのはレンズのほうである。
筆者は近視の度数も乱視の度数も強いため、歪みのない快適な視界と、レンズの仕上がりの薄さを求めてプラス料金を支払ってきた。加えて最近は老眼の症状も出始めてきたが、遠近両用、中近両用といった累進レンズは、往々にしてグレードが高いほどユレや歪みといった見え方の違和感が少なく、快適に見ることができる。
また、レンズの性能は日々進化している。自分に適したものを選べば視界をアップデートすることができるため、じつはレンズに投資する価値は大いにアリ。私は現在10本の度付きメガネを併用しているが、もっとも高価なのがカール・ツァイス(以下、ツァイス)製のレンズで、なかでも高グレードの製品を選んだため価格はレンズのみで15万円超である。