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 しかも明らかに怒りながら。これが本当に良かったのである。

 何を語っていたかと言えば「マッチメイク論」である。インタビューのタイトルは『人生を“マッチメイク”する。その概念をアントニオ猪木から学んだ』。この中で長州力はかつて猪木に言われた言葉を紹介している。

長州力さん ©文藝春秋

弱いヤツはマッチメイクで潰れる

《あるときに会長(※猪木のこと)のそばについて海外に行ったときに、会長が、「長州、国会の中の政治家ってみんな“マッチメイク〞だぞ」って。》

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 ここで出てきた「マッチメイク」という言葉に注意しながら、じっくりと読んでほしい。国会議員も務めた猪木は、こう長州に説明したという。

《(政治家は)自分で自分をマッチメイクしてる人間もいれば、他人からマッチメイクされる人間もいる。いくら自分でマッチメイクしても弱いヤツはそのマッチメイクで潰れていってる。

 でも政治家ってみんな国民から選ばれて入ってくるんだよな? なのにすべて入ったらマッチメイク。中には仕事を一生懸命やる人もいるけど現状の大半はマッチメイクで、弱いマッチメイクをするヤツはみんな落ちていくし、権力に触ることもできない》

 ここでいうマッチメイクとは何か? この言葉を、普通に考えれば「試合を組むこと」である。プロレスの興行で言うと「マッチメーカーがその日のカードを決めること」だ。もっと言えば「このシリーズはこういう方向性で行く」という大きな流れを描くのも、マッチメイクと呼ぶのだろう。「仕掛ける」を意味するとも解釈できる。

現場のレスラー側の視点から考えてみる

 実は、これより以前に長州力はマッチメイクについて自らの口で語っていたことがある。

《マッチメイクって言葉は俺はあんまり発したくないものではある。だけどまあ、べつに変な意味でもないか。試合を組む、流れを組むっていう。俺はそれを坂口さんから引き継いだんだよ。》

 これは雑誌『Number 1006号』(2020年7月2日)で語っていたもので、聞き手は井上崇宏編集長。井上氏が他の雑誌でも長州の聞き手となっていたのだ(どれだけ信頼されているかわかる)。ちなみに長州がここでいう「坂口さん」とは、元レスラーで新日本プロレスの社長だった坂口征二のことだ。長州は平成初期ぐらいから坂口のあとを受けて新日本プロレスの「現場監督」をしていた。試合を組むマッチメーカーとしても重要なポジションにいた。

 おさらいするとマッチメイクとは「試合を組む、流れを組む」(長州)こと。では現場のレスラー側の視点から考えてみよう。上記の文脈だとマッチメイクとは「上から与えられた役割」とか「自分に命じられた仕事」という意味が想像できる。井上編集長も次のように補足している。