11月1日、深夜0時半。朝日新聞社に所属する複数の社員や記者の携帯に1通のメールが届いた。

〈今の朝日新聞という組織には、絶望感ではなく、絶望しかない〉——。

 そんな文章が綴られたメールには「退職のごあいさつ」という題のPDFファイルが添付されていた。

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朝日新聞本社 ©︎iStock

 送り主は、10月末で同社を退社した南彰(みなみ・あきら)氏。政治部や大阪社会部などで長年政治取材に携わり、『政治部不信 権力とメディアの関係を問い直す』 (朝日新書) などの著書もある。30代の若さで新聞労連委員長に就任したことでも知られている“名物記者”だ。

 メールの宛先は中村史郎社長と角田克専務の2人。それ以外に編集局に所属する多くの記者がBCCで含まれていたと見られる。

 朝日新聞の社員が語る。

「南さんは11月1日付で沖縄の地方紙『琉球新報』に転職しました。メールは、彼が朝日新聞で勤務する最後の日の夜に送られてきました。従来は地方紙の記者がステップアップして転職してくるのが当たり前だった朝日新聞にとっては、逆に地方紙に人材が流れるというのは手痛い話。そして、メールに添付されていたPDFファイルには、南さんが内部から朝日新聞の在り方に絶望していった経緯が事細かに綴られていた。翌朝、社内ではこのメールの話で持ちきりでした」

南彰氏(本人のXより)

 南氏は社長以下多くの社員に向けて、一体何を書き残していったのか。

「週刊文春」は、南氏のメールと「退職のごあいさつ」と題されたA4用紙6枚にわたる文書を入手した。