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先輩デスクX氏の発言に…

 南氏は2018年から新聞労連の委員長に就任する。2年間の任期を終えて、会社に復帰したあと、朝日新聞への〈思いが打ち砕かれた〉出来事に直面したという。それは、安倍晋三元首相銃撃事件が起きた2022年7月8日の深夜のことだった。

〈参院選報道を仕切っていた先輩デスク(現・経営企画室)が突然、ニタニタしながら近づいてきて、「うれしそうだね」と話しかけてきたのです。人の命を暴力的に奪う殺人と、言論による安倍政権批判との区別もつかない人物が、報道の中核を担っている状況に慄然としました。「あなたのような人間はデスクの資格がないから、辞めるべきだ」と指摘しましたが、「僕、辞めろって言われちゃったよ」と茶化され、その後もしつこくつきまとわれました〉

〈冷笑に満ち溢れた管理職が跋扈する姿は、近年の幹部のもとで進んだ人心の荒廃を象徴するものだと感じています〉

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〈権力者からいくら罵声を浴びせられても動じないだけの力は身につけてきたつもりですが、身内からの冷笑は心身に堪えたのだと思います〉

先輩デスクの発言に絶望したという南氏のメール

 前出の朝日新聞社員が説明する。

「この『先輩デスク』とは、首相官邸や外務省、自民党など政治部で王道を進んできたX氏。ソウル支局の経験もあります。今は経営企画室の幹部で、いわゆる『出世コース』。批判する人を笑い、体制におもねるような人物が、このまま会社の中枢を担うようになることに南さんは絶望したのでしょう」

 そして、南氏は文書の後半で、改めてこう綴るのだった。

〈そう、今の朝日新聞という組織には、絶望感ではなく、絶望しかないのです〉