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待ちきれなくなったファンの1人が水辺で川に飛び込むようなポーズを取ると、警察官から厳しい声が。
「道頓堀川には飛び込まないで下さい。危険です。過去に死亡事案も発生してます。やめなさい!」
だが、もはやこの狂乱は止められそうにない。水辺に集まる多くの人がスマホのカメラを構えている。人が川に飛び込む瞬間を逃すまいと。それは、彼らにとっては試合中継を見ることよりも大切なことなのだ。
「あと1人! あと1人!」
9回裏2アウト。どこからともなく「あと1人」コールが始まる。
試合終了。水面に波が広がるように、大きな歓声が巻き起こる。同時に、スマホのカメラを持つ手が一斉に上がる。
「道頓堀川に飛び込む行為は大変危険です! 飛び込んでも、すぐに救助することは難しいです!」
警察官の呼びかけにも熱が入る。だが、ほどなくして最初の1人が飛び込む。続いて2人目、3人目……。戎橋の隣の橋からも飛び込みがあったようだ。警察官は駆け足でボートに乗り込み、救助に向かう。
野次馬たちの煽りがエスカレート
カッパのコスプレをした男、先ほどのスクール水着……ハロウィンの続きが行われているかのようだ。彼らは阪神ファンなのか、それともただ目立ちたいだけなのか。飛び込んだ人たちは警察官からきついお叱りを受けていた。
次第に、あちこちから「とべー!」という声も上がるようになる。両手を挙げて注目を集め、飛び込むような素振りを見せる若者。手拍子に合わせて「おい! おい! おい!」と煽る野次馬たち。スマホのカメラは一斉にそちらを向く。