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「飛び込みを煽る行為は大変危険です! やめてください! 命の危険もあります!」
警察官の声が響くと、若者は飛び込むのをやめる。フリでないことは分かるらしい。
「くたばれ読売そーれいけいけ!」
ふいに一際大きな応援歌が道頓堀商店街から響き渡った。縦縞のユニフォームは、水辺よりも道頓堀商店街に多かった。円陣を組み、拳を掲げて応援歌を響かせる。そこに警察官がマイクで呼びかける。
阪神タイガース日本一おめでとうございます!
「阪神タイガース日本一おめでとうございます! 立ち止まらずお進みください!」
優勝が決まってから10数分。道頓堀川の水面に面した遊歩道からはみるみる人が減っていくのがわかる。午後10時を回るころには、人出はほぼ半減していた。水辺に立っていた若い警察官の一人が目を細めて言った。
「もっと大変なことになるかなって思ってたんですけどね。早く収まってよかったです。みんな、優勝する瞬間を大勢で楽しみたかったんでしょうね」
翌日は月曜日。38年ぶりの夢から覚めれば、また日常が始まる。大阪の空に響いた「六甲おろし」には、少しだけ感傷が混じっていた。