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青学の駅伝ランナーが「トークもうまい」のは偶然ではない…原晋監督が選手探しでひそかに重視していること

source : 提携メディア

genre : エンタメ, スポーツ

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学生も自然と表現力が豊かになる

原監督の会話の回路には、いくつかの「チャネル」があって、テレビに出演する時はサービス精神が旺盛に発揮される。それもまた原監督の一部であるが、活字媒体で話を聞く時は違うチャネルの回路が開く。そこでは思いもしなかった話が何年経っても出てくる。原監督にはいろいろなものが眠っていると思う。

監督が「話す人」なので、学生たちも表現力が豊かで話を聞いていると楽しい。藤川拓也、川崎友輝、高橋宗司、神野大地、久保田和真、小椋裕介、渡邉利典といった初期のメンバーからはじまって、2023年度の4年生、志貴勇斗、佐藤一世にいたるまで、それこそ何十人と話を聞いてきた。

高橋、渡邉のふたりは私と同じ宮城県出身ということもあって応援していたが、ふたりともユニークな人材で(彼らはアート方面に興味を持っていた)、陸上の経験談も話題が豊富だった。

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そして忘れられないのは、神野大地が3年生の時である。山上りの想定練習を行った夕方にちょうど取材の時間が取れた。開口一番、彼はこう言った。

「僕、山を上ることになりそうです」

かなりの手ごたえがあったようで、そのあと、原監督も興奮の面持ちで、

「生島氏、これはウチが優勝するよ。神野は山の神級だよ」

と話していたのが忘れられない。そして2015年、青山学院は神野の快走もあり、初めて優勝する。その前の晩秋の時点で、青山学院の面々は優勝できるという確信に近いものを抱いていたのだ。

「走りの記憶力」とその語り口

その後も、森田歩希、鈴木塁人などのキャプテンにはそれぞれに思い出があるが、最近では2021年度の主将、飯田貴之の取材が面白かった。

その時は箱根駅伝での総合優勝を受けてのインタビューだったのが、「3年までは復路ばかりだったので、最後の箱根は往路で勝負に絡める区間を走りたいです、と監督には話しました」という話から始まって、全日本大学駅伝で自身がアンカーを務めながら駒大に突き放されたことなど、レースでの思い出を話してもらった。そのうち、彼が4年間のすべてのポイント練習の達成度、感触を記憶していることが分かった。