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道頓堀にいた人たちの大半は『にわか』ファン

 そこへやってきたのが全身緑色タイツの男性。顔にも緑色の塗料を塗り、頭には皿のような物をつけている。見覚えがある。日本一が決まった直後に道頓堀川に飛び込んだ「カッパのコスプレ男」だ。飛び込んだ後、深夜までどこにいたのか、「寒いよ~」と言いながら道頓堀商店街を歩いていた。共に歩くパートナーらしき女性からは距離を置かれている。

陸に上がったカッパ。40代 Ⓒ文藝春秋

「飛び込んだのは僕です。実は別に阪神ファンじゃないんですけどね(笑)。せっかくなので盛り上がりに便乗しました。迷惑かけないように、自分たちで救助ボートまで用意して万全の体制で飛び込んだんですけど、陸に上がったらお巡りさんたちに取り囲まれて、人生で一番怒られました……」

 ちなみに男性は40代。先ほどゴミ拾いして警察官から感謝されていた大学生の倍以上の年齢だった。

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「道頓堀川に飛び込むのはダメでしょう。僕は反対派です」

 そう冷静に話すのは、トラッキーの恰好をした男性。手首には、赤い「5番」のリストバンド。

偽トラッキーの中身は40代の新庄ファン Ⓒ文藝春秋

「今日、道頓堀にいた人たちの大半は『にわか』ファンなんじゃないですかね。まあ、僕も新庄が阪神で活躍していたころには『にわか』だったんで、人の事いえないけど。いずれにせよ、節度を守って喜ぶのがいいと思いますよ。僕もこの後、ゴミ拾いしてから帰ろうと思います」

日常に溶けていく熱狂の痕跡

 午前2時過ぎ。警察官はほとんどが撤収し、レフトスタンドから持ち帰ってきた熱気そのままに応援歌を歌い続けていた縦縞軍団も、ついに歌うことを止めて戎橋の上に座り込んだ。三々五々に帰途に就いた。

 その後、彼らのうち一部は縦縞ユニフォームを着たまま戎橋の上で酒盛りを続け、若い女性の嬌声も交えながら夜通しで歌い続けていた。午前4時すぎには熱気に当てられた外国人男性が、規制の取り払われた戎橋の上から道頓堀川にダイブし、陸に上がれなくてしばらく苦戦していた様子も記者は確認している。だが、それらはもはや、阪神ファンによる日本一の狂喜乱舞というよりは、「グリ下」で日々繰り広げられる光景の延長線上にあると言う方が近いような気がした。

 こうして、38年越しの夢の跡は、夜明けと共に何事もなかったかのように日常に飲み込まれていったのだった。

午前4時過ぎ、道頓堀川に飛び込み、仲間から救出される外国人男性 Ⓒ文藝春秋

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