「いつまでやんねや……」午前1時を過ぎても勢いを増していく
パインアメは岡田彰布監督の大好物。優勝を「アレ」と呼んでツキを呼んだように、今シーズンの阪神を象徴する流行のアイテムだ。撒き散らされるパインアメは岡田監督へのお供えか。佐藤輝明のユニフォームを着たファンの1人が近くの警察官にパインアメを投げつけて、猛烈な勢いで怒られていた。
道頓堀商店街中心地での熱狂は小1時間ほどに及んだだろうか。それまでは大目に見ていた警察官も、気を取り直したように「道路上で立ち止まらないでください」と再び声を上げ始め、円陣の解散を試みる。すると縦縞軍団は、やはり歌声を止めることなく、戎橋筋商店街を難波方面へと南下していった。
彼らが練り歩く様子は、さながらパレード。そのまま解散するわけもなく、なんば駅近くで方向転換して再び舞い戻ってきた。今度は戎橋筋商店街のアーケードの真ん中にその歌声を響かせる。なぜか井口資仁、清田育宏、今江敏晃らロッテの選手たちの応援歌を完コピして歌い上げ、「なんで清田やねん!」とツッコミを受ける。
午前1時を過ぎてなお、彼らは疲れるどころかその勢いを増していく。どこからともなくやってきた阪神ファンたちが輪に加わっていくのだ。輪の中に近本光司に似た顔の持ち主がいれば、
「おお! 近本がおる! そっくりや!」
と叫び、その場で胴上げが始まる。
「いつまでやんねや……」
商店街のほとんどはすでにシャッターを閉じていたが、カラオケ店の従業員が思わず店頭から顔をのぞかせて苦笑する。
阪神ファンの男子大学生は率先してゴミ拾い
戎橋に戻ると、路上には踏みつぶされたパインアメの残骸が転々と散らばっていた。周辺を根城にしている路上生活者と思われる人々が迷惑そうな顔をしている。ふと、紺色のユニフォームを着た男性がゴミ拾いをしているのに気付いた。オリックス・バファローズのユニフォームだ。
「悔しいっす……! 近くで飲んでたんですけど、負けてトボトボ帰ろうとしたらゴミ拾いしていた若者がいたので、せっかくなので一緒にゴミ拾いしてました」
その男性より率先してゴミ拾いをしていたのは阪神ファンの男子大学生だった。
「もちろん日本一はうれしいです。でも喜ばせてもらった分、自分たちの後始末は自分たちでちゃんとしようって思って」
大学生は警察官からも感謝されて誇らしげな顔をしていた。