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チョッパリの奴ら!

 次いで、首都・平壌に住む3人の話を紹介する。韓国から直接電話はかけられないため、中朝国境の知人を経由して取材する形を取った。

(12)イ・ソンホ(38歳・男性)

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 中朝国境近くに住む男性に質問事項を託し、平壌在住の同郷の後輩イ氏に電話をかけて録音してもらった。イ氏はこの時点では、日本の雑誌の取材であることを知らない。

──最近どうしてる?

「食べて生きていくのに辛くて。去年より大変ですよ」

──平壌はいいほうじゃないの?

「そう思うなら、(平壌に)上がってきてください。ガソリンが値上がりしてタクシー代も上がったから、みんなバイクを買いたがっています。でもナンバーを取るのに、1000ドルかかります」

──核実験やミサイル発射を引き続き行っているけど、ミサイルが日本上空を通過したのも知っているよな。日本といえば、思い浮かぶものは?

「急に何をそんな、保衛部が尋問するように。ハハハ」

──地方では、平壌の人たちがどう考えているかわからないからね。

「チョッパリ(日本人の蔑称)の奴ら! すっきりしたじゃないですか。だけど、こんなことを続けないでほしい。人民班からしょっちゅう講堂に集められて討論や総括をしたり、正直言って飽きるじゃないですか。もう静かになったらいいな。戦争をするなら早くすればいいし」

──トランプ大統領をどう思う?

「荒れ狂ってる印象ですね。でも誰がアメリカの大統領か、平壌でも知らない人は多いですよ」

トランプ大統領の「経済封鎖」発言に対して、2017年9月22日、平壌駅前の大型スクリーンで放映された金正恩委員長の声明を伝えるニュースを見る市民

──金正恩将軍様について、平壌の人たちはどう思うの?

「え! どうして急に、金正恩将軍様について聞いてくるんですか。お兄さん、どうした急に。電話でこんなことを聞く?」

──平壌は、核心(中枢)階層じゃない? 地方の考えと平壌の考えがどう違うのかわからなくて。金日成首領、金正日将軍、金正恩同志を比較したら……。

「(少しいらついた声で)お兄さん、これ盗聴されるよ」

──だから、早く言ってくれよ。

「(小さな声で)狂った野郎! 狂った奴! もうやめましょう」

──兄の金正男氏が殺害されたのを知っているか?

「党の新聞を読むと、南朝鮮が捏造した事件を北朝鮮がやったように転嫁した、と書いてある。一方で、本当は我が国(の工作員)が出て行って暗殺したといううわさも流れていますよ。聞かれるから答えたけど、お兄さんはまさか保衛部のスパイじゃないでしょうね?」

 率直な声を聞いた後、先輩から取材の旨を説明してもらった。

これ、盗聴されてない?

(13)チョ・ミヨン(42歳・女性)

 国境近くに住む男性から、平壌の工場で働く親戚の女性への電話。

──最近、暮らしはどう?

「どうやってよくなるの? 大変よ。制裁のせいで物価が上がるし。ガソリンが上がったから、3台あった工場の通勤バスが1台に減ったのよ。燃料の心配、食べ物の心配。10日分の配給で、ひと月暮らさなきゃいけないんだから。最近は、地方のほうが暮らしやすいんじゃない?」

 地方は配給が途絶えて久しいが、平壌ではまだ出ているようだ。

──核やミサイル実験をどう思う?

「国防にたくさん投資するから、こんな生活になっているのが現実じゃない?」

──金正恩同志をどう思う? おじいさんやお父さんと比べたら?

「なぜ急にそんなこと聞くの? これ、盗聴されてない? 勝手なことしゃべると、追放される心配があるの。平壌は怖いのよ」

──金正男氏暗殺を聞いた?

「知らない。報道しないから。殺されたの?」

 チョさんはこの後、金正男氏殺害事件に関心を持ち、逆に質問を重ねてきた。こうしたニュースは、地方に住む人のほうが詳しいのだ。