突然だが、エディー・ジョーンズさんから「お茶しませんか?」という誘いがあった。
 私は『エディー・ジョーンズとの対話 「コーチングとは信じること」』という本を2015年に上梓しており、年に1度か2度、継続的にインタビューを行ってきた。しかし、ふたりだけでコーヒーを飲みながら話す、というのはこれまで経験したことはなかった。

 エディーさんは日本代表の次期ヘッドコーチの候補者の一人と報道されている。実際のところ、どうなっているのか知りたい。緊張はするが、断る理由もないので、都内に向かった。

オーストラリアのヘッドコーチを辞任したエディー・ジョーンズ氏 ©文藝春秋

「私の情熱は日本を指導することにある」

 11月10日午前10時、約束の時間きっかりにエディーさんは待ち合わせ場所に現れた。

ADVERTISEMENT

「元気だった?」といつもの挨拶があり、エディーさんは「私はあまり元気じゃないよ」と冗談めかして言う。

 ヘッドコーチとしてオーストラリアを率いたW杯では、国として初めての予選プール敗退。母国のメディアからは「開幕前に日本と面談」といった報道がなされ、袋叩きに遭ってしまった。

「厳しい体験でした。4年後、2027年のオーストラリア大会のことも睨んで若いメンバーで臨んだんですが……。この20年間、オーストラリアのラグビーは停滞したままです。それは予算の不足、加えて各地域協会の協力が得られないことにも起因しています。彼らはお金は出さないが、口は出すというスタンスです」

 11月にオーストラリアのヘッドコーチを辞任、いまはフリーの状態になっている。

「これだけはハッキリさせておきたいのですが、日本協会からのオファーはありません。それでも私の情熱は日本を指導することにあります。将来のプランをプレゼンテーションする機会があればうれしいですし、私の頭の中にプランはあります」

 いったい、どんなプランなのか、具体策を聞いてみた。エディーさんの発想の根底にあるのは「日本は衰退のフェイズに入っていること」だった。

アルゼンチン戦の試合終了間際、厳しい表情を見せる日本代表の(左から)リーチマイケル、姫野和樹、ディラン・ライリー ©時事通信社

「W杯で敗れたイングランド戦、アルゼンチン戦は多くの示唆を与えてくれます。後半20分まで、日本には勝つチャンスがありました。しかし、ラスト20分で突き放されてしまった。このパターンは2011年W杯以前の日本の負け方と一緒です。みんなはこう思います。頑張ったけど、惜しかった。もう少しで勝てた。それで日本人が満足していた時代に逆戻りしてしまっています」