――どういうことでしょうか?
赤平 専門的な話になりますが、「二次障害」というものがあります。ものすごく簡略化してお話しするので言葉足らずで誤解されてしまうかもしれませんが、発達障害の人が、小さい時から怒られ続けて自己肯定感を徹底的に叩きのめされた結果、「自分はダメな人間だ」と落ちていくと、鬱になる。逆に、「俺は悪くない。社会がおかしい」となると、反抗挑戦性障害になりやすく、挑発的になってしまう。
息子へのいじめを止めるため、積極的に学校に関与
――発達障害であることと、問題行動は別の話ということですね。
赤平 「発達障害だから危ないよね」と思われがちですが、そこはイコールではなくて、環境がすべてではないかなと思っています。世界の多くの専門家が、発達障害当事者を改善せよ、ということより、社会の認識を高めて、いかにダイバーシティを実現するか、それしか道がないと主張しているんです。
そういった意味で、僕は息子へのいじめを止めるために積極的に学校に関与しました。いわゆる、環境調整ですね。
カミングアウトしたほうが楽になる
――具体的にはどんなことをされたのでしょうか。
赤平 例えば、小学校の時は毎日息子を学校まで送り迎えしていました。その際、学校の子たちに「おはよう」「さようなら」「今日何したの?」と6年間、声をかけ続けました。多くの学校や地域で取り入れている「見守り活動」を毎日勝手にやっていたんです。すると、「あれは赤平の父ちゃん」という認識が子どもの中で高まります。知っている人の子どもはいじめにくいですから、いじめもだんだんなくなりました。他のお子さんも私が日々付きそうことで、「あの子は何かあるんだ」と大きくなるにつれて理解します。
なので、カミングアウトしたほうが楽になると僕は思っているんです。ただ、それができないのもわかります。やっぱりまだまだ社会的な認知は高くないし、障害者というレッテルで生きなきゃならないのは辛いのでしょう。
でも、無理やり健常者として生きた結果、二次障害になって、会社に適応できず退職してしまう人も少なくありません。大人になっても発達障害の自分を理解してもらえない辛さは息子にとっての将来のリスクなので、減らしたいですよね。