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藤井聡太竜王・名人とチームメイトになって実感した「本質を見抜く」力

藤井聡太竜王・名人とチームメイトになって実感した「本質を見抜く」力

『超進化論 藤井聡太』より #2

2023/11/20
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 ABEMAトーナメントは3人1組のチーム同士による団体戦で、持ち時間は5分、1手指すごとに5秒加算という超早指し戦。チームリーダー藤井さん、藤井猛さん、私というメンバーで、トーナメントを戦った。チームメイトの藤井猛さんは、私と同い年の50代。四間飛車で玉を動かさないまま穴熊を攻める革新的な戦法、「藤井システム」で知られる振り飛車の大家だ。

 チームメンバーは各チームのリーダーが“ドラフト制”で指名する。私は藤井聡太さんからチームの1人目として指名を受けたのだが、指名されたときは驚き、いい結果が出せるようにと気合も入った。

 残念ながら、藤井さんの期待に十分応えられず、結果的にはチームは予選を突破することができなかったが、公式戦にはない団体戦というものが新鮮だったし、普段なかなか関わることがない3人でひとつの目標に向かって交流ができたことは、私にとっても貴重な体験だった。

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©文藝春秋

ポーカーに見た「本質を見抜く」力

 ABEMAトーナメントの終了後には、チームを組んだ藤井さんと藤井猛さんに、私のYouTubeチャンネルに出ていただいて予選敗退の反省会を行った。

 歳の離れた先輩棋士2人とのトークということでやりにくさもあったかと思うが、いつも通り誠実にお話しいただき、とてもありがたかった。

 ABEMAトーナメントの予選では、藤井猛さんが対局のときは、藤井さんと私が控室でその対局を見守る形になる。指し手の感想を話しながら、藤井さんは終始興味深そうにしていたのが印象的だった。将棋好きならば誰しも人の将棋を見るのも楽しいものだが、それは藤井さんであっても変わらないのだな、と。

 だが、雑談時とはうって変わって、対局を観戦しているときの藤井さんの指摘は、なかなかに鋭い。ときに厳しく、率直なコメントが出るのは聞いていて面白いものだった。やはりそうしたちょっとした言葉や仕草に、藤井さんの実直さ、将棋に対するたゆまない真剣さが見えている。