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 多い方の数字を採用すると、日本人の10人に一人、人口にすると1200万人もが性的マイノリティの可能性があるわけですね。そう考えると、自分は全然珍しくないんだな、と思えて心が少し軽くなりました。

手術にかかる費用は?

 性的マイノリティについて大まかなところを押さえたら、次は具体的な性別適合手術について調べていきました。

 日本では公的な性別変更、つまり戸籍上で男性から女性、女性から男性に変わるためには、性別適合手術を受ける必要があります。

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 性別適合手術は具体的にいうと、男性なら精巣を、女性なら卵巣を切除するという手術です。

 現在の日本では、性別適合手術は基本的に保険が効きません。

 正確にいうと、制度上は保険が適用されるケースもあるのですが、その条件が非常に厳しいため、ほぼすべての方が自由診療というかたちで手術を受けています。

 手術や手続きなどにかかる費用は、数百万円! 多少の蓄えはありましたが、安心かつ安全な手術を受けるには、お金はあるに越したことはありません。これまで以上に仕事をがんばらないといけないということがわかったので、再び就職活動を始めました。

 いろいろと考える時間が欲しかったので、今回も一人になる時間を確保できる物流系のドライバーに決めました。

 面接では、性別適合手術を受ける予定があることは話しませんでした。

 自分の生き方は間違っていないと思っていましたが、やっぱりどこかで拒絶されてしまうのではないかと怯える自分もいて、話せなかったのです。

 面接の結果、採用していただけることなりました。この会社には2020年8月から、故郷の大阪に戻る2022年3月までお世話になることになります。

 2020年8月から勤務した物流会社。トラックを運転するために大型免許も取得した(写真:筆者提供)

 手術のために少しでも多く稼いでおきたかったので、深夜勤務も行うようになりました。この会社の方々がみなさん、とても良い方だったんです。今となっては面接のときにカミングアウトしてもOKだったのでは? そう思えるほど素敵な人たちばかりで、大阪に戻らなかったら、おそらくずっとお世話になっていたと思います。