ただ、もちろん悪いところばかり目を向けるとそうなりますが、日本はいい国だと思いますよ。こうやって日々暮らせているわけだし、平和に朝起きることができて何より母国だし。今は好きとか嫌いっていうよりも、ちょっと息苦しいけどそこまで悪い国じゃないかなと僕は思ってます。
どういう集団なのか理解する難易度が高くなっている
――日本の裏社会を長い間見てきて、変化は感じますか。
丸山 めちゃくちゃ感じますね。ヤクザも眼に見える場所からは姿を消したし、オーバードーズで道端に転がってる人も昔より減った。外国人売春婦は世代も国も変わりましたね。ある時期は中南米が多くて、あるときはアジアが増えて、また違う国が入ってきたり。あと、変な話、昔はギリギリ善意で成り立っていた裏ビジネスというか、その業界の人たちとの緩衝材で使ってるような居酒屋も成り立たなくなってきて、久しぶりにあの店行こうと思ったらもうないわって。いつも情報くれてるバーのマスターのところに行ったら夜逃げしてたとか。そうした一つ一つは小さな変化かもしれないけど、僕にとっては街全体から見たら大きく変わってることも多いです。
――裏社会の中でいうと、組織の在り方も変化していますか?
丸山 群れのリーダーみたいな人はやっぱり存在していて、その人のメンツを立てる感じはあるんだけど。でも、前はもっとピラミッド構造の組織として成立している感じだったので誰がリーダーで誰が幹部で、誰が下っ端なのかがわかりやすかったのが、最近は構造が崩れてきている感じはします。今は半グレや詐欺集団など、どの組織もリーダーっぽい人がいて、その周りを同列の人たちがグルッと囲ってるような感じも多くて、正直わかりにくい。誰がその群れを率いるリーダーなのかすごくチェックするようになってますね。特に若者たち中心のグループは露骨に俺がリーダーって言わないこともあって、なんとなくやってますみたいな雰囲気を出されることもあるんです。どういう集団なのか理解する難易度が高くなってますよ。日本のヤクザを取材できるのは、まだピラミッド構造が残っているからっていうのもあります。