「たけしさんは生放送中にズボンを脱ぎ始めて…」今では考えられない『ザ・ベストテン』のハプニング
――印象に残っている失敗はありますか?
久米 まず、『ザ・ベストテン』には失敗のない回がないんですけれども。あえて言うなら、ゲストにビートたけしさんが来たときですかね。
黒柳さんが「たけしさん、生放送だから絶対に脱いじゃダメですよ」と、本番前に釘を刺したんです。それなのにたけしさんは生放送中にズボンを脱ぎ始めて……。カメラからは外れた位置でしたが、僕と黒柳さんからははっきり見えていました。2人して「ギャー!」と叫んでしまって。やることが悪辣でしょ(笑)。
――失敗とは異なりますが、『ザ・ベストテン』は新幹線の中で歌唱したり、飛行機を降りながら登場したりといった、今では考えられないような演出でも注目を集めていました。
久米 新幹線中継は「ベストテンの名物」でしたね。中森明菜さんに新幹線の車内で『十戒』を歌ってもらったこともありました。あのとき、明菜さんに出演交渉したら、「その時間は新幹線で移動中だ」と言うので、車内で歌わせてもらえるよう国鉄に許可を取ったんです。
飛行機から登場してもらったのは、松田聖子さん。タラップから降りてくる場面を登場シーンにしたかったのですが、想定よりも早く飛行機が到着しそうだったので、機長に誘導路をゆっくり走ってもらって、時間を稼ぎました。どちらも、今のテレビでは考えられない演出です。
『久米宏のTVスクランブル』からテレビの企画に携わるようになった
――『ザ・ベストテン』を卒業したあと、18年半メインキャスターを務めた『ニュースステーション』では、久米さん自身も数多くの企画に携わったそうですね。企画に携わるきっかけはなんだったのでしょう。
久米 テレビの企画に携わるようになったのは、『ザ・ベストテン』と並行して出演していた『久米宏のTVスクランブル』からです。僕と同年代ながら、すでに芸人として絶大な人気を誇っていた横山やすしさんと一緒にメインパーソナリティを務めました。
やすしさんは、酔った状態で番組出演するような破天荒な方でした。そんな方と生放送をしたら、どんな事になるのか。考えるだけでも楽しかったですね。
ただ、企画という仕事の面白さを知ったのはもっと前。TBSに入社して4年目に中継リポーターを担当した、『永六輔の土曜ワイドラジオTokyo』がきっかけです。
――その頃は、どのように企画を立てていたのでしょうか。
久米 企画の内容は、何でもいいんです。ラジオでヌード中継をして、声だけで本当に裸かどうかリスナーに伝える、なんて企画をしたこともあります(笑)。とにかく数分で、声だけで面白さが伝わるものを考えなければいけないから、すごく難しい。でも、それも含めて楽しかったですね。