2006年に放送され、エンディングテーマ「ハレ晴レユカイ」がヒットチャートを席巻するなど、まさに社会現象になった『涼宮ハルヒの憂鬱』。2024年1月にはコンサートイベント「涼宮ハルヒの弦奏 Revival」の開催が予定されるなど、今なお多くの注目を集め続けているこの作品だが、朝比奈みくる役として出演した声優の後藤邑子さんは、まさにその渦中にいたひとりだった。
その時、“当事者”にはいったい、何がおきていたのか――。著書『私は元気です 病める時も健やかなる時も腐る時もイキる時も泣いた時も病める時も。』より、一部を抜粋して引用する。
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「この作品は、ムーブメントを起こす作品になります」
そして、2006年が明け、私は涼宮ハルヒに出会います。
テレビアニメ『涼宮ハルヒの憂鬱』(2006年4月放映開始)の朝比奈みくる役は、オーディションではなく、指名でキャスティングされました。これは、いくつもの幸運が重なったのです。
『涼宮ハルヒの憂鬱』のキャスティング会議の席で、石原立也監督が「後藤邑子さんはどうでしょう?」と、私の名前を挙げてくれたと聞いています。監督は、それまで私が出演した作品たちを観て、私の声を知ってくれていました。
会議に同席していた音響監督の鶴岡陽太さんは、以前から何度もお仕事でお世話になっていた方で、「後藤なら大丈夫だと思いますよ」と言ってくれたそうです。石原監督と鶴岡音響監督の提案を受けて、「なるほど後藤さん、いいですね」と了承してくれた企画プロデューサーが、前述のアニメ『SHUFFLE!』で私のキャラクターを変貌させた伊藤さんだったのです。
監督、音響監督、プロデューサーの3人の恩人と、いままで演じてきたキャラクターたちのおかげで、私はみくるちゃんに出会えました。
「この作品は、ムーブメントを起こす作品になります」
『涼宮ハルヒの憂鬱』の最初の顔合わせの場で、プロデューサーがそう言ったことを覚えています。私たちキャストは、キョトンとするだけでした。