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 この作品には、私のような声優プロダクションに所属する専業の声優だけではなく、芸能プロダクションに所属するキャストが起用されました。当時としては珍しいことで、彼女たちは歌手兼、女優兼、声優というタレントです。若くて、かわいくて、アフレコも歌唱もラジオもすべてうまい。平野綾ちゃんと茅原実里ちゃんを初めて見た時は私も驚きました。

「最後のダンス、ちょっと…」ある日のスタジオで変わった“空気”

 また、『涼宮ハルヒの憂鬱』の収録現場は、スタッフとキャストがお互いに意見交換しやすい雰囲気があり、距離が近かったのも印象的でした。

 ある日、スタジオで共演者の小野大輔くんが「最後のダンス、ちょっと覚えたんだよ」と、キャラクターたちが踊るダンスを真似たことがあります。ちょうどその頃、アニメのエンディングで、テーマ曲「ハレ晴レユカイ」に合わせてメインキャラクターたちが踊ることが話題になっていました。曲に合わせて踊るアニメーションの出来がすごくいいのです。

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 ただ、この時、スタジオで小野くんが踊ったのを、すごい! とはしゃいで喜んだ綾ちゃん、実里ちゃんの2人と、私の反応は真逆でした。

「なんてことしやがる!?(※言ってないですよ。心の声です)」

 小野くんのダンスを見た制作陣の間に「これ……、イケるんじゃね?」的な空気が一瞬にして広がった気がしました。

 気づかないふりをしました。その話題にならないようにするのが精一杯。ヤバい……。これは、私にとって、よからぬことになる……。

上昇するオリコンチャート、投稿されていく動画…ついには武道館の舞台へ

『涼宮ハルヒの憂鬱』がアニメファンの間で評判になると同時に、「ハレ晴レユカイ」のシングルCDはオリコンチャートを上っていきました。ファンの間で「踊ってみた」動画をYouTubeにアップロードするのが流行しました。作る側と観る側が一緒になって『ハルヒ』を盛り上げます。

 私が案じたとおり、私たちメインキャストの5人「SOS団」(平野綾、茅原実里、杉田智和、小野大輔、後藤邑子)のうち、特に、歌唱を担当する3人、綾ちゃん、実里ちゃん、私は、演じたキャラクターと同様にイベントやコンサートで「ハレ晴レユカイ」やその他の劇中歌を、「振り付きで」披露するようになっていきます。