タトゥーに励まされた部分も大きいが…
長い年月をかけて人間不信を克服し、網野氏は現在、「30代が一番充実している」と言えるまでになった。その過程では、最愛の母親の命日に入れたのを皮切りに増えていったタトゥーに励まされた部分も大きいという。しかし、それが原因で不安を感じることもある。
「タトゥーを入れている知り合いで、機転が利き、仕事ぶりも非常に真面目な人がいます。普段はタトゥーを見せたりすることのない、物腰の柔らかい人です。
その人は大きな企業の出世頭だったのですが、SNSにアップされた過去の写真が企業幹部の目に留まり、タトゥーが問題になりました。結局、内定していた昇格人事は白紙になったと聞いています。上場を目指す企業なので、社員の“身辺調査”には余念がないのでしょう。
自分が見せびらかすつもりがなくても、タトゥーが原因で、能力とは無関係に経済的な影響を受ける可能性があるのは不安ですね」
後悔はないけど薦めない
社会生活においてはリスクともなり得るタトゥーを、網野氏はこう捉える。
「タトゥー=怖い人、という紋切り型のイメージは、必ずしも当てはまらないと思っています。ただ確かに、ママ友のなかには遠巻きに私をみて軽蔑した眼差しを送ってくる人もいますし、外見で評価を下げられる事実があるのも確かです。
『中身さえ見てくれれば……』と本音では思うものの、第一印象が外見で決まる事実は否定できませんし、そこで門前払いされる価値観で世の中が回っていることは受け入れなければならないですよね」
まだ幼い我が子が将来、タトゥーを入れたいと言い出したらどのように答えるのか。
「私の身体にここまで墨が入っているので、禁止するのは理不尽ですよね。本人がタトゥーを入れることについて、『どこまで理解しているか?』に尽きるように思います。よく言われている話ですが、プールや温泉などの当たり前に楽しめる施設にも入れませんし、奇異な目で見られることもまだまだあるでしょう。
私個人はタトゥーを後悔していませんが、周囲に積極的に薦めることは絶対にありません。ライフステージが変わるごとに、タトゥーによる弊害が出てくることもあり得ます。むしろ、タトゥーのデメリットをすべて理解してなお入れたいと思えないのであれば、見送るのが最適解かなと感じます」