ウクライナ東部でロシア軍が手を焼くハイマースの威力とは…
さてウクライナの実際の戦場でもNATO諸国がウクライナに供与したこのHIMARSや155mm榴弾砲がいまもロシア軍相手に有効な兵器となっているのは周知の事実である。かくいう不肖・宮嶋もウクライナ東部の、3カ月以上ロシア軍に占拠され、ロシア軍の大隊司令部まで置かれていたバラクレアという町で取材していた。
その司令部はバラクレア郊外の宅配業者の巨大集配センターみたいなのを接収したもので、1000人のロシア軍将兵が宿営し、これまた接収した車両修理工場まで備え、そこを文字通り基地とし、ほうぼうで狼藉の限りという言葉がかわいく聞こえるほど、あらゆる戦争犯罪に手を染めていた。そんなロシア軍の司令部の頭上からHIMARSが降り注いだ現場に立ち会ったのである。
それは1000人のロシア軍将兵が駐屯する基地が一瞬で瓦礫の山と化した瞬間であった。攻撃直後はロシア兵の屍累々、ロシア軍は戦友の遺体を放置して逃げ出すほど、HIMARSの攻撃は突然で、強烈だったのである。司令部内にはこれまたあわてて逃げ出したのか、新兵教育計画書なる極秘書類までそのまま残していく様である。それは軍の司令部というより、ごみ屋敷の様相であった。
そんなウクライナという実戦の場でもその威力を遺憾なく発揮したHIMARSや155mm榴弾砲であるが、米陸軍、海兵隊のHIMARSは陸上自衛隊などが配備している、MLRSの半分の火力、つまりランチャーにはMLRSが12発装填できるのに対しHIMARSは同時には6発しか装填できない。あれだけ大きくてパワフルなもんを好むアメリカ人が自衛隊が装備した兵器の半分の火力に甘んじているのにはちゃんと理由がある。その半分の火力を補って余るほどの長所がHIMARSにはあるのである。
それはっちゅうと、タイヤ履きのHIMARSはC-130輸送機に搭載できるギリギリのサイズと重量で文字通り高機動システムなのである。事実今回、矢臼別で実弾射撃を実施した米海兵隊のHIMARSは沖縄から海兵隊のC-130輸送機でこの近くの計根別飛行場まで運ばれてきたのである。しかし自衛隊にはHIMARSを積めるC-130輸送機はあっても陸上自衛隊のMLRSを載せる輸送機がないのである。必然近い将来必ずやってくるであろう台湾有事の際は宮古島や与那国島に素早く展開する必要もあるんやが、その際も船を利用するしかないのである。
ちなみであるが、イスラエルもふだんからこのMLRSを配備しているが、あそこは国土が小さいうえ島がない。