恋人に別のパートナーができても「嫉妬はあまりしない」
このような言語化ができるようになってきた頃から、以前は頻繁に通っていたポリーラウンジに参加することが減った。複数愛についての考えが自分の中でまとまったこと。複数愛/非独占愛が、自分のアイデンティティではなく、数ある性質の一つ程度に思えてきたこと。
「真のポリアモリーとは」といった線引きや「ポリアモリーあるある」などについて議論することなどにも、興味がもてなくなってきたことなどがある。
文月さんは、自分の恋人に、別のパートナーができても、嫉妬はあまりしないという。
「相手がいい人だったらすごい嬉しいなという気持ちです。幸せになってほしい。だから逆に、メタモア(パートナーのパートナー)との嫌な話や辛そうな話を聞くと、その人、大丈夫? 何か手助けしようか? と心配になることはあります。家族に向ける心配の感情と同じで」
文月さんは、結婚している上に恋人がいるという立場だ。では、相手が自分一人だけと付き合っている場合と、他にパートナーができた場合とでは、後者の方が「フェア」になったような安心感はあるのだろうか。そう尋ねると文月さんは、次のように答えた。
「正直、多少はあるかもしれないです。本当は数の問題じゃないよとかっこつけて言いたいんですけど、その方が、気が楽だなと思ったりはします」
相手の恋人が一人だと、独占的な気持ちを向けられるのではないかと身構えてしまうからという気持ちもなくはない。だがそれ以上に、相手が楽しそうに見えるのがいいという。
非独占愛であることによって、恋愛以外の部分も含め、人間関係が広がる方が楽しいと文月さんは言う。親との仲は微妙だが、だからこそ余計に、形式的家族ではない仕方で関わりたい。血の繋がりではなく、絆と好意で繋がる仲の方が、心地いいと感じる。
「僕と奥さん、今は二人で住んでいるんですが、他の人と三人で一緒に暮らしていた時期も何回かあって。一般的にはスキャンダルって言われがちですけどね。それもまた、僕らが世間一般の〈家族〉の意味を疑って、自分たちで広げていけたからかなと」
三人で暮らして「物理的なしんどさはあった」
自宅で文月煉さんにインタビューを行っている間、配偶者であるあすみさんも同席していた。あすみさんは、文月さんからポリアモリーだと伝えられた時にどう思ったか。三人で暮らしていた時期はどう考えていたのか。
あすみ「(伝えられた時は)そうなんだ、ふーんっていう。本当にそれだけでした。仕事が忙しかったのもありますけれど、そこまで気にしていませんでした。ただその後、体調を崩して、住み込みの仕事を早めに切り上げて帰ったら、彼は他の女性と暮らしているんですね。そこからは、より、現実の問題として直面したというか」
煉「遠距離での生活が三年くらいになる予定だったんですけれど、(あすみさんが)体調の問題で途中で帰ってきたんですね。もちろん、あらかじめ状況を伝えていて、その上で恋人と二人で生活していたんですけど。事情があって、奥さんが早めに帰ってきてからは、奥さんと恋人と僕の三人暮らしになって。二人は面識もなかったので、最初は戸惑いもあったと思います」