寝たはずなのに、十分に疲れが取れていない――。現代人の多くは、「睡眠」や「休養」に悩まされているのではないか。睡眠改善インストラクターの福田英宏さんは、「自律神経の仕組みを理解することで解消できます」と語る。

 プロアスリートをはじめとするスポーツ選手に「リカバリー理論」を指導する「疲労回復の専門家」が教える、睡眠の質を高める方法とは?(全2回の1回目/続きを読む

福田英宏さん ©文藝春秋/撮影:榎本麻美

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――「睡眠改善インストラクター」という資格があるとは知りませんでした。

福田 睡眠に関する資格は、「睡眠改善インストラクター」のほかに、「快眠セラピスト」「寝具ソムリエ」「スリープケアカウンセラー」など、10種類あります。国家資格ではなく、一般社団法人日本睡眠教育機構(JSES)などが発行している資格になります。

 私が、睡眠改善インストラクターの資格を取るために受講したときは、夜勤がある職業の方や交代制で働く方、たとえば鉄道やバスの運転手さんなども受講されていました。また、入浴剤を作っている企業や寝具を扱う企業の方なども、こうした資格を有しているケースが珍しくないですね。

疲労回復の専門家になったわけ

――福田さんも、以前はそうした企業に?

福田 私は、リカバリーウェアのメーカー勤務を経て、独立しました。メーカーで働きながら、早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に通い、休養について研究していました。

 健康の3要素は、「運動」「栄養」「休養」から成り立つのですが、休養だけがまだまだ学問的に伝わっていない。リカバリーウェアを販売するために、スポーツ選手を抱えるような企業へ行くのですが、そもそも休養をどのように取るべきなのかという部分についての知識が浸透していなかったんですね。

 たとえば、プロスポーツ選手に、「普段どのように休養を取っていますか?」と尋ねると、多くの選手が「寝るとか体を横にするとかですね」といった回答が多かった。運動と栄養は、チームに専門家がいるのですが、休養の取り方については、誰も教えてくれません。商品を売るよりも、休養の普及や啓蒙活動を行うことが大事だと思い、現在にいたります。

大前提は「睡眠の確保」

――休養の上手な取り方。それには、睡眠の質が問われるわけですね。

福田 大前提として、睡眠時間の確保は欠かせません。ですが、1日8時間寝ることが理想的と言われていますが、そういうわけではないんですよ。睡眠時間は、人によって目安が違います。