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福田 そうです。たとえば、夕方以降は部屋の照度を落とすだけで、副交感神経は働きやすくなります。夜になっても、ずっと明るいままで過ごしている人が多いので、暖色系の照明に変えるだけで、まったく違います。

 以前、箱根駅伝の出場を目指している大学のチームをアドバイスしたのですが、寮の中の環境点検をすると、とても照度が高かった。夕方、練習を終えて寮に戻ってくると、まるでコンビニのような明るさの中で過ごすことになる。これでは、かえって交感神経が刺激され、リラックスできなくなってしまう。脳が休まらないまま就寝時間を迎えるので、眠りづらくなるという悪循環を生んでしまうんですね。

 その寮は、自動点灯ということもあり、帰ってくると自動的にパッと玄関がその明るさになる。廊下を歩くときも、トイレに行くときも自動で明るさが追ってくる。便利だけれど、体を休めるという観点から考えれば逆効果なんです。

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太陽光を浴びることも重要

――自然に逆らうというのは、体には良くないんですね。

福田 その通りです。ですから、日中に太陽を浴びることもとても大切です。晴れた日の太陽の明るさは10万ルクスほどあるため、セロトニンという物質を分泌させてくれます。セロトニンは、通称“幸せホルモン”と呼ばれる物質ですが、セロトニンを分泌させるには、2500ルクスほど必要です。部屋の中の照明はせいぜい100ルクス程度ですから、太陽を浴びる必要があるんですね。

©文藝春秋

 セロトニンは、夜になると睡眠物質であるメラトニンに変わります。日中にたくさんセロトニンを分泌すれば、その分、メラトニンも多くなるため眠くなりやすくなります。1日は24時間ですが、私たちの体内リズムは24.18時間と少し長いです。太陽を見ることで、体内リズムはリセットされるようにできているため、ずっと家の中にいるとリセットされなくなり、0.18時間分が蓄積され、昼夜が逆転してしまうといったことが起きてしまうんです。

――目安として、どれくらい太陽を浴びたらいいのでしょうか?

福田 1日5分は浴びてほしいです。多ければ多いほどいいのですが、その際、できれば目の上に視床下部という部位があるので、正面を向いて当たると、なお効果的です。一方で、目は交感神経に直結している部位でもあるため、アスファルトの照り返しなどによっても、交感神経が刺激されます。マラソン選手がよくサングラスをかけていますが、遮光効果に加え、アクティブになりすぎないための抑制効果もあるんですね。

入浴時間にも要注意

――他にも、日常でできることがあれば教えてください。

福田 入浴は、寝る1時間半前を心がけてほしいです。23時に寝る方は、21時30分に。21時に寝る方なら、19時30分です。体の深部体温が上がって、そこから下がってきたときに眠ると深い睡眠になります。深部体温を温めるには、やはりお風呂が欠かせません。睡眠とお風呂は、表裏一体の関係性です。