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福田 サウナは健康な人だからできるんです(笑)。不健康な人がやったら疲れてしまいます。たとえば、冷え性の方は交感神経と副交感神経を交互に刺激することで、緊張と弛緩が繰り返されるわけですから、血流を良くするといった理由があるならいいと思います。

 ですが、睡眠の質を向上させるという観点から見れば、過度な交感神経と副交感神経のスイッチングは控えた方がいいでしょう。ちょっとこちらのグラフを見ていただいてもいいですか?

睡眠の質の違いを可視化

――このグラフは一体?

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福田 3人の被験者の睡眠を比較したグラフになるのですが、一つ目は40代男性の方のグラフです。この男性は、23時から6時の間に寝ていることが確認できます。青が副交感神経で、赤が交感神経です。睡眠時間の後半からようやく青が出ているため、疲労回復的には50点の睡眠です。

 一方、日ごろからヨガをやっている40代の女性の方のグラフを見てください。就寝直後から青がものすごく出ていることが分かります。ほぼ100点に近い睡眠の質です。

 そして、最後が60代のタクシー運転手の方のグラフです。ほとんど青が出ていない。睡眠時間を確保しているはずなのに、十分に休まっていない。つまり、疲労回復ができていないということになります。

――こんなにはっきりと分かるんですね。運転中にも支障が出そうです。

福田 仰る通りで、タクシー運転手の方の寝ていない時間帯を見てください。赤い点がポツポツとあることがわかりますよね? 瞬間的に交感神経が刺激されている……つまり、ストレスやイライラを感じているということになります。

 実は、このドライバーの方は、重度のいびきも確認されたのですが、これほど酷いいびきをかいているのは寝ながら風船を膨らませているような状態です。いびきって、それくらい力を使うんです。寝ているのに、疲れることをしている。当然、体は休まりませんよね。

「寝具や寝衣にお金をかける人が増えてきましたが…」

――しかも、日中にストレスを感じる機会が増えると交感神経が優位になり、副交感神経が働きづらくなる。疲れが取れない、ストレスを感じやすいというのは、悪循環によって生まれていることが分かります。

福田 本来は、夕方を過ぎると副交感神経が優位に働くはずなのですが、夜にコンビニへ行けばまぶしいくらい店内が明るい。携帯電話も普及して、夜になっても明るいモニターを見つめてしまう。技術が進化することは喜ばしいことですが、休養がそのスピードに追いついていないんですね。

 ですから、オーバーワークだったり、疲れやすくなったりする。運動や栄養は習う機会があるけれど、休養や睡眠についてはそうした機会がない。昨今はようやく、寝具や寝衣にお金をかける人が増えてきましたが、「寝る」ことにどうしてお金を払う意味があるんだという人も少なくありません。ですから、私は休養の重要性を普及しなければいけないと思っているんです。