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老舗大手事務所ではないからこその鬼門

——SMAはお笑いの世界では老舗を追いかけてきた後発の事務所であり、タイタンは所属芸人が30組と少人数です。それゆえの事務所の弱点はありますか。ちょっと踏み込んだ話で言うと、いわゆるバーターと呼ばれる、先輩芸人が出てるからうちの若手も入れてください、みたいな交渉はされたりしますか?

 平井 うちはまったくそういう芸人がいないんですよ。

 八木 僕らも、そういうものはありませんね。

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 平井 やっぱりそこが一番の鬼門というか、芸人たちにも「申し訳ないなあ」と思うことですよね。2004年にお笑い部門を立ち上げた当初は、何もない状態からどうチャレンジしていくんだ、どう会社の知名度を上げていくんだ、という壁がありました。

 八木 立ち上げ当初は、どういう戦略を立てていたんですか。

 平井 最初は教育的指導です。芸人も元々フリーの人間ばかりだから、仕事の依頼に対するレスポンスが遅かったので、まずはそこから「すぐに返信してください!」って。

 もし仕事相手側に優先順位があったとしたら、SMAは立ち上がったばかりで優先度は高くないんだからね、と。レスポンスを早くして、プロデューサーに「SMAに電話すればすぐに回答があるから、次の作業に移れる」と思ってもらいたい。だから「できれば1時間、難しくても2~3時間以内に返事をしてくれ」と指導して、仕事相手からのSMAの優先順位を上げてもらう作業をしていました。

映画監督や構成作家も兼任する八木順一朗氏 ⓒ文藝春秋

 八木 バーターがない分、僕はとにかく「対面で会うこと」を意識しています。会いにいく数が他社と比べて多いかどうかまでは分かりませんが、お仕事をいただいたら、最低3回は先方に会いに行こうと思っていて。

 まず、お仕事を頂いたことに対して御礼と挨拶に行きます。そこで収録について軽い雑談をします。収録後にも「ありがとうございました」という御礼と、「うちの芸人はどうでしたか」というフィードバック、「放送楽しみにしていますね」という意味も兼ねて会いに行く。最後に、放送が終わったら、「あそこが良かったですね」とか「あのシーンが使われていましたね」みたいな話をしに行きます。

 「もういいよ」っていうぐらい会えば、なにか変わるかもしれない。やはり大手事務所のマネージャーさんは抱えている芸人の数が多いので、何度も会いに行くのは難しいと思います。そうなると、少数精鋭で戦ってる事務所のほうが、コミュニケーションを大事にできるところがあるかもしれません。

 平井 絶対にそうですよ。やっぱり顔の見えない人よりも、顔の見えた人のほうが良いですしね。

 八木 そうですよね。芸人とマネージャーとのやりとりも人間と人間だし、マネージャーとテレビ局も、結局人間と人間なので。とにかく旬なモノを早いうちに届けて、その感想をもらう。その全部が生のやりとりなので、なるべく鮮度を持ってやらないと、愛してもらえないですしね。

本記事の全文は「文藝春秋 電子版」に掲載されています。(「SMAとタイタンのマネージャーが考える、売れる芸人の条件」とは?)