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 夜中の3時くらいに夢を見ていた。その夢の中で、俺はおしっこをしていたのだが、半分起きている自分もいた。

「あー、おしっこをする夢か。子供の頃、こういう夢を見ると、よくおねしょをしちゃったもんだよなー」

 そして、ハッと目を覚ますと、おねしょをしていた。

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 二十歳の夜。

 高座名をもらいに来た大事な日に、その人の家でおねしょをするなんて……。それも、いつも落語の練習で使っている座布団の上に……。

 情けなかった。

「洗濯機の中の座布団は何?」

 しかし、もはやどうにもならない。

 かといって、先輩をムリヤリ起こして、謝るのも気が引けたので、とりあえず、座布団を二つ折りにして、洗濯機の中に放り込んだ。そして、志の輔さんのタンスからパンツを拝借して穿き、また寝た。

 ただ、言うまでもなく、気づかれないわけがない。

 朝、志の輔さんが起きて、トイレに行こうと部屋を出るやいなや、戻ってきた。

「ナベ、ナベ! 部屋を出るだろう、洗濯機が置いてあるんだ。洗濯機はいつものように置いてあるんだけど、その中に座布団が入ってるんだ。あれは、何?」と聞くので、しかたなく事実を話すと、「ああ、そうなんだ、お前がおねしょを、はい、分かりました。ガッテン、ガッテン!」

 そんなことがあっても、俺は、6代目紫紺亭志い朝になれた。